2002年に大修館書店より「健康教育ナビゲーター 知っておきたいキーワード210」を発刊しました。当時としては最新の情報を盛り込んだつもりですが,たった1年経ただけでも健康教育を取り巻く状況は大きく変化しています。このページでは当時取り上げたキーワードを中心にして,「Web版改訂健康教育ナビゲーター」を公開していきたいと思います。もちろん新しい話題も取り上げていきたいと思っています。

 小学校体育・保健DVDシリーズ
  
日本コロンビア(株)か発売されている小学校体育・保健DVDシリーズの中から,私が監修した「第1巻けんこうってなんだろう」,「第7巻病原体と病気の予防@」,「第8巻病原体と病気の予防A」の3巻が発売されました。平成23年から完全実施となる新学習指導要領に沿った教材です。

 「新版学校保健概論」が発刊されました(松岡弘,渡邉正樹編)
 
「新版学校保健概論」が光生館より発刊されました。旧「学校保健概論」を学校保健安全法に基づいて改訂したものです。 (2010年8月)

 
「最新学校保健安全ハンドブック」(渡邉正樹 編)が発刊されました。
  
「最新学校保健安全ハンドブック」が教育開発研究所から発刊されました。
   学校保健安全法の施行(2009年4月)を踏まえ,学校保健,学校安全,学校給食(食育)などについて,
   Q&A形式で解説しています。 詳しくは
こちらへ
   

 
「心とからだの健康」(健学社)2008年11月号に「新学習指導要領のここがポイント−養護教諭は保健教育にどのように取り組むか」を掲載しました。

 
「体育科教育」(大修館書店)2008年8月号に「新学習指導要領で保健はどう変わったのか」を掲載しました。

 「新版健康教育ナビゲーター」を発刊しました!
 
「新版健康教育ナビゲーター 健康教育の“今”がわかる」を2008年年6月に発刊しました。
           
 
まえがきより
 新版では、旧版で取り上げた用語を全体的に見直し、近年の動向を踏まえて書き直すとともに、重要と思われる最新の用語を新たに取り上げた。たとえば、「新興感染症・再興感染症」では、2007年に日本で大きな問題となった麻疹の流行について加筆し、結核対策についての記述も旧版発行後の動向にもとづいて修正した。また新たな用語として「がん対策基本法」や「うつ病・自殺」などを取り上げた。「新エンゼルプラン」は最新の対策である「子ども・子育て応援プラン」に差し替え、「地球温暖化」は大幅に加筆した。
 (中略)
 新版ですべて書き換えたのが、旧版の「お話」の部分である。今回は、「健康教育的映画ガイド」として、健康にかかわる映画の話題を取り上げた。たとえば、「薬物乱用」に関連した映画として「レクイエム・フォー・ドリーム」を、「新興感染症・再興感染症」に関連して「アウトブレイク」を、「認知症」に関連して「アイリス」を取り上げて、健康教育の視点から解釈を加えて紹介している。

 実は「健康教育的映画ガイド」は,かつて「学校保健のひろば」(大修館書店)で連載していた「ちょっとHealthyなシネマガイド」を下敷きにしたものですが,ほとんどはこの単行本のための書き下ろしです。
 この本の詳しい情報は大修館書店ホームページまで

 健康格差を生む「保健格差」とは
 
下記の「再び『保健格差を憂える』に元に執筆した「健康格差を生む『保健格差』とは」が,消費者情報2007年4月号に掲載されました。この号は格差社会の特集号です。

 
保健教育における実践力
 
「体育科教育」8月号に座談会「保健教育における実践力を考える」が掲載されました。岡崎勝博先生の司会で,森昭三先生,高橋浩之先生と私で,保健教育における実践力のとらえ方や実践力を育てる保健授業について討論しています。ぜひご一読を。

 
再び「保健格差を憂える」

 近年,様々な領域で「格差」が取り上げられている。ちなみにAmazonで「格差」をキーワードとして書名を検索してみたところ,70件ヒットした。「格差」以外にも,それと関連した用語,例えば「勝ち組」,「負け組」のような用語まで検索を広げるならば,さらに多くの書籍を見つけることができる。それぞれの領域の人々のみならず,一般社会の関心を集めている話題と言えるであろう。
 その中で個人的に気になる用語がある。「デジタル・デバイド(digital divide)」である。情報通信技術(ICT)を使いこなせる人とそうではない人との格差を意味する。パソコンの普及やインターネット利用が急速に広まっている反面,ICTを活用する機会がほとんどない人々がいる。平成16年に行われた調査によると,国民の60%以上がインターネットを利用しているが,60歳以上に限定すると4人に一人しか利用していないという(平成17年度情報通信白書より)。健康問題を例にデジタル・デバイドをとらえるならば,病院や診療所の予約がオンラインで行える人とそうではない人では医療にかかる機会に差が生じる。まして保健のための情報を自ら得ようとする人にとって,ICTは重要な手段であり,それを使いこなせることは不可欠といえるではないだろうか。
 筆者は拙著「健康教育ナビゲーター」(2002年)の中で,「保健格差を憂える」というタイトルで健康格差と保健格差の話題を取り上げた。ここで健康格差とは文字通り,死亡率や疾患の罹患率のような健康状態に格差が生じていることであるが,それに対して保健格差(注)とは保健サービスの利用など健康を守る機会における格差を意味している。ICTの利用格差は,そのまま保健格差につながってくると考えられる。
  Kreps(2005)は,健康リスクが高く,保健の恩恵を受けていない人々は,ネット上の保健情報を利用する上で限界があり,同時にヘルスケアを十分に受けることができないことを指摘している。人々の健康情報へのアクセス能力を高めるために,デジタル・デバイドを解決することを目的としたプロジェクトがアメリカの国立がん研究所によって推進されている。
 しかし本当にデジタル・デバイドの解消が健康問題の解決にそのままつながるほど単純なことなのだろうか。以前,危険なダイエット食品をインターネットを通じて購入して,重大な健康被害を受けた話があった。ICTを使いこなせても,そのまま健康へ直結するわけではない。前掲書では保健格差を解消するために健康リテラシー(health literacy)が重要であると述べた。健康リテラシーには上記のICTの利用を含む情報収集能力に加え,批判的思考力も必要とされる。もちろんそのためには健康についての正しい知識・理解が基盤となる。ではどのような対策が実際に必要となるのだろうか。今後引き続き,この話題を取り上げていきたい。

(注)保健格差という用語は筆者による造語であり,一般的な用語ではない。ただし,Healthy Peopleなどには,それに該当する概念は取り上げられている。

2006年4月

  

 新しい保健と評価の話

 
平成17年7月に中央教育審議会「健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会」
が,体育・保健における初等中等教育修了段階で子どもたちが身に付けているべきミニマムを審議し,「これまでの審議の状況」として中間報告が発表した。内容は体育と保健それぞれについて,これからの教育の方向を示しており,今後の学習指導要領改訂に向けた重要な資料となると思われる。
 この中間報告では「ミニマム」という表現が使われているが,中教審の「新しい義務教育を創造する(答申)」(平成17年10月)でもナショナル・スタンダードという用語が使われ,「義務教育の内容・水準は,ナショナル・スタンダードとして,全国的に一定基準以上のものを定め,その実現が保障されることが必要である」との記載がみられる。この答申以前にも「ナショナル・ミニマム」や「ミニマム・スタンダード」といった表現も他の文献で目にすることがあったが,これらはほぼ同義で使用されているように思われる。すなわち子どもたちが教育によって「身に付けるべき最低限の内容」を示したものということである。
 ミニマムの内容については別の機会に取り上げるとして,今回はミニマムに関わる評価について触れてみたい。保護者らに対するアカウンタビリティを維持していくためにも,ミニマムが身に付いているかどうかを明らかにしなければならないことは言うまでもない。中教審答申においても「教育の目標を明確にして結果を検証し質を保証する」ことが明記されている。しかし,健やか部会の「審議の状況」では具体的な評価については触れられていない。
 アメリカ合衆国では,ほぼ全教科でナショナル・スタンダードが作成されているが,NCLB法制定以降は到達目標の実現状況を明らかにするため評価が強く求められるようになった(NCLB法は学力保障とともに,教育格差の是正も目的となっている)。具体的には学力テストの実施,そしてその結果等の公表である。ナショナル・スタンダードという用語が日本においても同義に使われるようになったことは,このNCLB法の影響があったと推察されるが,日本では観点別の評価規準の作成が行われていることから,アメリカ合衆国と同じような方向に進むかどうかは明確ではない。しかしながらナショナル・スタンダードの実現が保障されるならば,実現の状況を明らかにする評価も必然のものとなる。それが従来の観点別評価規準によって示される評価なのか,あるいは新たな評価方法が開発されるのか,非常に興味のある点である。個人的には新たな評価が必要になってくるのでないかと考えているがいかがであろうか。
 
ところで平成18年2月に出された中教審初等中等教育分科会教育課程部会の「審議経過報告」の中では,ミニマムもナショナル・スタンダードも見当たらない。なぜ!?


 上記に関連して,光文書院「こどもと保健」No.55(2006年4月)に『保健の「ミニマム」への期待』を掲載しました。

2006年4月


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