■クチナシ
 ■アカネ科


花(6月撮影)

●白いクチナシの花の実は濃いオレンジ色。この実は黄色の天然色素として古くから料理に使われてきました。例えば、おせち料理に欠かせない栗きんとんや、栗の甘露煮。黄色がとても鮮やかです。でも、栗の実は、あんなに黄色をしていたでしょうか?茹でた栗はもっと薄い黄色ですし、裏ごししてペースト状にすると薄茶色になってしまいます。栗と一緒にクチナシの実を入れて茹でると、実から黄色の色素が出て、鮮やかな黄色に仕上がるのです。


実(12月撮影)

●クチナシの実の黄色い色素はクロシンといって、カロテノイドの仲間です。ニンジンや黄緑色野菜などに多く含まれるβカロテンもカロテノイドの仲間です。ただ、多くのカロテノイドが水よりも油脂によく溶けるのに対し、クロシンは水溶性です。このため、栗を茹でるときクチナシの実を入れると、黄色の色素が茹で汁に溶け出して栗を染めるのです。

●食品を染める色素には化学合成された色素(タール色素など)と、天然色素とがありますが、今日では自然食品志向の高まりで、天然色素の需要が多くなりました。赤系や黄色系の天然色素は数多くあるのですが、青い天然色素は2つしかありません。一つはスピルリナというラン藻から取られる、スピルリナ青。もう一つがクチナシ青と呼ばれる色素です。

もっとも、青い色をした食品は、元々あまり存在しないため、添加物としての青色色素もあまり必要でないのかもしれません。そのためかクチナシ青は、クチナシ黄と混ぜて、緑色や黄緑色を作るためにも使われています。

●クチナシ青はクチナシの実をタンパク質分解物と混ぜて酵素処理(βグルコシターゼ)することにより工業的に作られています。また、クチナシの実を別の方法で処理することにより、クチナシ赤と呼ばれる赤い色素も製造されています。

●黄、青、赤。その白い花からは想像もできないカラフルな世界を、クチナシの実は潜めているのです。

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