古生物学は生物の進化を研究する学問です。地球上における生物の起源は30億年以上前に遡ると考えられ、これまでに実に様々な形の生物が地球に現れては絶滅していきました。現在地球上に暮らしている生物の多様性はこうした長い歴史をかけて進んだ適応や進化というプロセスの結果であり、それぞれの生活に適した様々な構造が見られます。 この授業では基礎理科Dのクラスを対象に、様々な動物の化石や骨格標本を観察しながら、こうした生物の歴史と多様性について考えてみました。
まず、ヒト、カエル、ハト、ネズミの骨格を比較してみました。これらの生物はすべて脊椎動物で、頭から繋がる脊柱があって、手足が二本ずつある、という基本的な構造は一緒です。しかし、個々の骨の大きさやプロポーションを比較してみると、随分違っていることがわかります。例えば、空を飛ぶハトは翼を動かすための筋肉が付着する胸骨が人間とは比較にならないくらい大きくなっています。このように、生物の形態と機能の関連を調べる分野は「機能形態学」と呼ばれ、化石生物の生態復元などで非常に重要な役割を担っています。
標本は学生さんたちにはどれもなじみのある生物のものでしたが、骨格を見る機会はあまりないのでしょう。「こんなになってるんだ!」という声を上げながら楽しそうに観察していました。ちなみに一番人気はやっぱり人体骨格。実は観察してみると結構面白いんですよね。
次に、様々な種類の化石を見て、どういう生物であったのかを考えてみました。おなじみのアンモナイトや三葉虫はすぐにわかる学生さんがたくさんいましたが、化石に母岩がついた状態の標本ではどの部分が生物だったのかわからなかったり、体の一部分しか化石にならないため全身の様子がまったく想像できない、というものもありました、また、現在では深海などに住んでいるためにあまりなじみのない生物でも、昔は非常に繁栄したために化石がたくさん見つかる、という例もいくつか観察しました。
地中から出てきた化石についての研究は、まずはそれが何の種類の生物だったのかという「分類学」から始まります。学生さんたちはルーペや顕微鏡も使いながら「何これ?」「○○じゃないのかな?」を連発していましたが、古生物学者も同じ質問から研究を始めます。それにしても時間軸の入った生物の多様性は大変なものです。
今回の授業ではF類で地学を勉強する三人の学生さんが授業の準備を手伝ってくれました。数多くの標本の仕分けや骨格の組み立て、標本や機材の運搬やセットアップ、実習中の説明など、お疲れ様でした。
(文責 中西 史)