理科のありか

地球の大きさを測る
—地学実験における新しいテーマ設定—
担当者:里 嘉千茂
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地学実験
地球の大きさを測る—地学実験における新しいテーマ設定—
2008年4月〜2008年7月
地球の大きさを測る —地学実験における新しいテーマ設定—

 時間的・空間的スケールが何桁にもわたって異なるような事物や現象を扱う地学においては,野外巡検による調査や観察,観測・測定・実験などを通して対象に自らアプローチすることがとりわけ重要な役割を持つ。
 そこで,「地学実験」の一環として,私たちが住むこの地球自体を対象としてその大きさを実測してもらうというテーマを最近新たに取り入れた。これは,日頃あまり意識することのない地球の大きさを,学生たちに実際に自分たちの手で測るという体験を通して実感してもらうと同時に,将来彼らが教育現場に立った時に,地球の大きさを自分たちでも測れるということを生徒にも伝えて欲しいという思いから設定したテーマである。
 と言っても,方法としては新しいものではなく,基本的には2200年ほども前の古代エジプトにおいてエラトステネスが用いた方法で,南北2地点間の緯度差と距離から地球の周囲の長さを求めるというたいへん簡単な方法である。
 具体的には,キャンパス内にほぼ南北方向の400m程度の測線を設定し,それに沿って移動しながら50mおきに緯度を測定させた。2名ずつの班に分け,一人にロードメジャーで距離測定を,もう一人に携帯型GPS受信機で緯度測定を行わせた(写真1・2)。測定は測線に沿って往復で行わせ,全員が両方の器具による測定を体験できるように,往路と復路で役割を入れ替えさせた。このようにして得られた各測定点の基準点からの距離と緯度差をグラフにプロットさせ,それを用いて最小二乗法で単位緯度差当たりの距離を求めて地球の南北方向の周長を計算させた。その結果,多くの班において,教科書や理科年表などに記載されている地球の大きさに誤差の範囲で一致する値を得ることができた。
このように,現代のハイテク技術であるGPSを利用することによりわずか400m程度の距離でも地球の大きさをほぼ正確に計測できることを実感させることができ,学生にも概ね好評であった。