大学アーカイブズをめぐる全国的状況

教育学講座(大学史資料室室員) 君塚 仁彦

 研究教育機関である大学には、その活動の過程で作成したり、他から受領したりすることを通じて蓄積された膨大な記録資料が保存されている。そのうち、歴史的・文化的に重要で、かつ継続的な価値を持つものとして保存・管理されるさまざまな記録資料(文書記録だけではなく音声・画像・映像・デジタル資料等も含む)、また、閲覧や展示など公開のための機関・建物を大学アーカイヴズ(University Archives)と言う。

 1987年、日本で初めて国または地方公共団体の公文書保存・管理、公文書館に関して定めた「公文書館法」が制定されたが、この前年、大学アーカイヴズの必要性を痛感した関係者が連絡協議会を立ち上げた。各大学には大学史編纂終了を機にアーカイヴズを設立する流れがあるが、1996年には国内初の大学アーカイヴズに関する全国組織「全国大学史資料協議会」が発足した。

 大学アーカイヴズについては私立大学の動きが目立つ。しかし、国内初の大学アーカイヴズは国立大学が設立している。欧米の大学アーカイヴズを参考に1963年に発足した「東北大学記念資料室」である。当時国内には、こうした大学アーカイヴズの設置例はなかったが、その後整備がなされ2000年に「東北大学史料館」としてリニューアルされた。同年には国内初の本格的な大学文書館である「京都大学文書館」も設立されたが、国立大学では、法人化や2011年の「公文書等の管理に関する法律」施行後、大学アーカイヴズに関する動きが活発になった。

 現在、国立大学では、東北大学、京都大学の他に、「北海道大学文書館」(2005年設立)、「東京大学大学史資料室」(1987年設立)、「名古屋大学大学文書資料室」(2004年設立、前身は1996年開設の名古屋大学大学史資料室)、「広島大学文書館」(2004年設立)、「九州大学大学文書館」(2005年設立、前身は1992年開設の九州大学大学史料室)等が活動を展開させている。その他、大阪大学には文書館設置準備室があり、また、一橋大学、愛知教育大学、京都教育大学でも大学アーカイヴズ整備に関する動きが見られる。今年、2012年には「東京外国語大学文書館」も発足した。本学の大学史資料室設立もこのような動きに連なるものであると言えよう。

 大学アーカイヴズは、大学の歴史に関する各種資料の収集、整理、保存、閲覧、調査研究を行うことを目的としている。しかし国立大学は、存在意義そのものについての具体的な説明が求められるようになってきている。大学アーカイヴズが、公開や研究、教育・広報活動を通して大学全体の研究や教育、施策立案や事務遂行に寄与することはもちろんである。同時に、自己および第三者による継続的な点検・評価や危機管理に対応し、組織としての説明責任を果たしていくこと、大学の個性・存在意義のさらなる明確化に寄与することなども今後の大切な役割になろう。我が国を代表する国立教育系大学である本学の場合、それに加えて日本の教育史・教員養成史、広く近現代史研究への貢献が期待されることになる。その役割は決して小さくない。

(2012.6.20)