ご挨拶

「史料」の保存と公開―大学史資料室の役割―

大学史資料室長 川手 圭一

 2018年4月より大学史資料室長に就任しました。藤井健志初代室長が立ち上げ、大石学前室長が次のステージへと引き上げた大学史資料室を、3代目室長として継承し、さらに発展させていくという課題を負っています。

 課題とは何か。それは、本大学史資料室が、自他ともに認められる「大学アーカイブズ」としての存在意義を確立し、大学の教育と研究、そして大学の運営にも安定的に貢献しうる組織になるということです。その基本が、まずは「東京学芸大学大学史資料室規程」第3条に掲げる資料室の業務、すなわち「(1)本学の運営及び教育研究等に関する重要な資料の調査及び収集 (2)本学の歴史に関するその他の重要な資料の調査及び収集 (3)収集した資料の整理、保存及び公開」の3領域をバランスよく確実に遂行できるように、その体制整備に努めることにあるのは言うまでもありません。

 まず(1)の「本学の運営及び教育研究等に関する重要な資料の調査及び収集について」です。これは、戦後、新制大学として発足し、今日に至るまでわが国の教員養成系大学の中核をなしてきた本学の運営とそこでの教育研究に関わる資料収集であり、法人資料の管理・保存も含めて、これからの教員養成系大学の歩む方向性を検討するうえでも重要な意味を持つものとなります。                            (2)の「本学の歴史に関するその他重要な資料の調査及び収集」は、1872年の師範学校開学に遡ってのさまざまな資料の掘り起こし作業であり、本大学史資料室発足以来、関係者の方々の協力のなか、精力的に作業が進められてきています。                                         (3)の「収集した資料の整理、保存及び公開」も喫緊の課題です。公開原則を確立し、目録を作成して収集した資料を随時公開していかなければなりません。

 このような業務を継続的かつ安定的に進めることが、何よりも将来、本大学史資料室が「公文書館等」の指定を受けることへの道を拓くものと考えています。

 私事ながら、私はドイツの近現代史を研究しています。そのため研究を進めるうえで、若い頃から今日に至るまでドイツ、そして近年ではポーランドのさまざまな文書館(Archiv)に通い、「史料」を収集してきました。公文書館の発展しているヨーロッパの中にあっても、特にドイツの公文書館の整備には目を見張るものがあります。連邦文書館(Bundesarchiv)に始まり、各州、各自治体の文書館、あるいは教会、企業、各種団体に至るまで、それぞれが自らの文書館を有し、自らの歴史資料の保存と公開に努めています。そこには高度な専門的知識を有する文書館員がいて、研究テーマに関する「史料」の有無、また「史料」へのアプローチなどに関する適切なアドバイスをしてくれます。各文書館の閲覧室には、研究者以外にも、多くの一般の人々がやってきて、たとえば自らのルーツを探すというように、文書館は公立図書館と同じように頻繁に利用されています。

 歴史資料は、歴史をたどりながら自らの存在を確認し、ときに未来への道標ともなりうるものです。それは、大学にとっても同じ役割を果たします。本大学史資料室が、その使命を担えるよう、私も本学資料の保存と公開に微力を尽くして参りたいと考えています。

 

 

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