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実践力を養う、ケースメソッド教育

概要policy

ケースメソッド教育とは

教育方針イメージ

ケースメソッド教育とは、学習者(以後、参加者)が判断や対処を求められる模擬ケース(事例)を教材とし、討論しながら意思決定や問題解決の実践力を磨くことを目的として開発された討論形式の授業(研修・講習)です。この方法は、ハーバ―ド大学の法科大学院で行われていた判例研究の授業方法を、同大学の経営大学院で経営教育に応用することで開発されました。
ケースメソッド教育の参加者(ケースの読み手)は、ケースのなかの当事者の立場に立って、自分ならばどのように行動すべきかを考えることにより、将来起こりうる事象に対しよりよい準備ができることが期待されます。


目的と効果

目標イメージ

教育の場では多種多様な課題が山積し、教師はその対応に試行錯誤することもしばしばです。この多様な課題に対応できる教師の実践力を養うための教育方法のひとつがケースメソッド教育です。
養護教諭や教諭がケースメソッド教育を学ぶ目的は、問題解決に必要な視点や情報、課題(問題点)への対応策を具体的に検討し、実践につなげることです。

ケースメソッド教育によって期待される一般的教育効果

 ・興  味:受講生の興味を、引き出せる
 ・理  解:講義形式よりも、具体的に討論することにより、
   理解が深まる
 ・問題発見・解決力、アセスメント能力、連携力の向上:ケースにおける疑似体験により、
  問題発見力や解決力、アセスメント能力、連携力を高められる
 ・実践能力:学習事項を実践に応用する能力を育成できる
 ・疑似体験:疑似体験により、将来起こりうる事象に対しよりよい準備ができる
 ・多様な価値観への気づき:他の受講者の多様な価値観により啓発される
 ・議論力 :討論の仕方、発言の仕方、会議の仕方を学べる

さらに、ケースを通じたディスカッションのなかで、養護教諭や教諭としての教育観や価値観が問われる場面があります。よってケースメソッド教育は、教員として教育の原点を問う方法としても効果的であると言えます。


準備

ケースメソッド教育を行うためには、ケースと、ティーチング・ノート、講師が必要です。 

@ケース
ケースとは、参加者が頻繁に遭遇する事例をもとにした多様な課題が含まれた教育用の教材です。
ケースを通じて参加者は、講師の意図する学習目標のもとに討論し、課題や解決方法を見出していく過程を経験します。

ケースに記載されている事項
 ・原則として事実に即して作成されている
 ・学習するためのテーマが含まれている
 ・学習に必要な情報が盛り込まれている
 ・当事者や関係者の状況や行動が記されている
 ・登場人物の立場で考えられるように書かれている

Aティーチング・ノート
ティーチング・ノートとは、いわゆる講師のマニュアルです。学習指導案のようなイメージを持っていただいてもよいでしょう。
筆者らが作成しているティーチング・ノートには、ケースによって参加者が学ぶべき「学習テーマ」、開始時の「アイスブレーキング」、「事前の個人学習の課題」、討論を進めるうえでポイントとなる「発問」、発問に対する「回答のポイント」、「ケースの結末」、ケースを理解するための講師と参加者のための「事前知識」、「板書計画」を記載しています。
 
B 講師(ディスカッション・リーダー)

討論にあたっては、講師が司会進行役を務めます。講師は、討論の流れが大きくずれたときや論点が定まらないときに調整をしたり、参加者からケースに関する質問が出たときに最小限の追加情報を与えたりする役を担います。
講師の発問によって討論が展開されるため、講師は学習目標を達成するための「よい発問」をしなくてはなりません。講師の「よい発問」によって討論が深まると、参加者の教育観や価値観を問える展開につながります。
つまりケースメソッド教育では、活発で深みのある討論がなされるかが重要となるため、討論の流れを左右する講師の果たす役割は大きく、講師の力量が問われることにもなります。


展開方法

一般的なケースメソッド教育の進め方によれば、図のとおり、参加者は事前に指示された「個人学習」を行ったうえで授業(討論)に臨み、当日の討論では短時間の「グループ討論」を経て「全体討論」を行います。
進め方の詳細は拙著をご覧ください。




参考文献

ケースメソッド教育をより理解するためには、以下の著書をご覧下さい。

入門編:岡田加奈子、竹鼻ゆかり 編著  『教師のためのケースメソッド』 少年写真新聞社 2011

中級編:高木晴夫(監修)、竹内伸一(著) 『ケースメソッド教育入門 理論・技法・ココロ』 慶應義塾大学出版会 2010

上級編:高木晴夫、竹内伸一 『実践!日本型ケースメソッド教育』 ダイヤモンド社 2006