学長からのメッセージ-大学卒業後の2年間とは

学長

「医者が一生の内に身に付ける知識の八割は卒業後の二年間で得られるものなのだ。多くを得た者も少なく得た者も、八割という数字に変わりはない。なんでもないことのようだが、これは恐ろしい事実である。」これは、医師で作家の南木佳士さんが、若月俊一氏-当時は貧しかった農村の医療に志し、佐久総合病院をつくることになる社会主義者にしての医師-について書いた本("信州に上医あり"、岩波新書、1994)の中にある言葉です。この言葉は、少し前に同じことを言った後に、「本書を読まれる医学生や若い医師諸君のためにもう一度くり返しておく。」と、強く念押しをして書かれている言葉です。

これは医師について言っているのであり、一般的なことを言っているのではないのですが、専門的な職にあっては、一通りの高等教育、学部教育を終えた後の何年間かの学びがその後を決めるというのは、まったくそのとおりだと思います。研究者も教師もそうでしょう。私も大学院進学から数えて40数余年の研究生活をおくってきましたが、自分も周りもまったくそうでした。ほんとうに「恐ろしい事実」でした。

皆さんが大学卒業後の2年間の進路として、本学を候補とし、訪ねてくれたことをありがたく思います。

みなさんが、みなさんの人生にとって大事なこの2年間を、本学でわれわれとともに学び、過ごすことになることを期待しています。

東京学芸大学学長
國分 充