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枠組みを広く

枠組みを広く

附属小金井小 大塚健太郎教諭に聞く[4]

  
━━━それくらいの枠で考えられるとプログラミング教育も怖がらずにできそうですね。
 

  • プログラミング教育というのが変なお化けの像にならないようにしないといけないですね。たかだかその子の思考の一断面に過ぎないですよ、くらいに思えればいいのではないでしょうか。「プログラミング的思考を育成する授業をしています」と言えば、そちらからも見られます、くらいでいいのではないですか。それくらい緩い空間に教室がなるといいの。

 
━━━プログラミング教育を教科から考える、というのがこの研究の当面のゴールではあるのですが、それだけ考えていてもダメですね。もっと広い枠組みも同時に考えていかないと。
 

  • 教科だけの枠組みで考えると継ぎ接ぎになってしまう危険はありますね。これまで教科で行ってきたことにプログラミング教育が入ってくることで、どういうところを目指しているのか、を明確にしてやらないと、プログラミング教育を考える側も、教科教育の側も歩み寄れない。余計なもの、異物が入ってきた、と捉えられる危険はあるから、お互いに納得できる「何のために」が見えないとダメでしょうね。

 
━━━指導要領なりその解説編なり、或いはその前の有識者会議のとりまとめなどに色々といいことは書いてあるのですが、常にそれをわかりやすく提示していくことが大切でしょうか。
 

  • そうですね、或いは総則にもプログラミング教育のことは書いてあるけれど、各教科のところに書いてあることも「ここはこう翻訳するとプログラミング的思考に繋がりますよ」というように言えるといいかもしれないですね。

 
━━━なるほど。それがうまく言えるとどの教科からも納得が得られるでしょうね。
 

  • どの教科でも色々と悩むところはあると思うので、「それをプログラミング的思考で考えてみようよ」と呼びかけたりするとか。それで何かが解決できたりすると「じゃあプログラミング、やってみようか!」となるのではないでしょうか。

 
━━━理想的展開ですね!
 


 

 インタビューを終えて

From Inside の第1回目は、大塚さんにお願いしようとずっと前から考えていました。
 
理由は3つあります。まず、私自身も国語部に所属しているので頼みやすい。次に、国語が専門の先生ではあるけれどプログラミング教育にも決して否定的ではないから、何か面白いことを言ってくれそう。(大塚さんは、新しいことを取り入れたり挑戦することに躊躇のない方なのです。)そして、国語の話に限らず何か大きな視点から提案してくれるのではないか、という期待がありました。
 
期待に違わぬ話の広がりっぷりで、インタビューの途中では「これ大丈夫かなぁ、まとまるかなぁ」とも思ったのですが、振り返ってみると重要な指摘がいくつもあったと思います。
 
特筆すべきは、カリキュラムマネジメントの重要性でしょう。新指導要領で、プログラミング教育のための新しい教科ができたわけではありません。既存の教科の中で行うとなったわけですから、「何年生のどの教科のどこの単元で何を学習して、それが次の学年のどの教科のどこの単元で何の学習に繋がって」といった大きなプラン無しにはプログラミング教育は立ち行きません。
 
例えば、6年生理科の「電気の声質や働きを利用した道具があることを捉える学習」でプログラミング的思考を養おうとした時に「Scratchでセンサーを制御させてみよう」と考えたとします。それ自体は授業として有り得るだろうと思いますが、しかし、その単元の中だけでScratchの基礎を教え、センサーを制御するとはどういうことかを教え、その上で「電気の声質や働きを利用した道具があることを捉える学習」まで進めるでしょうか。相当、厳しいでしょう。
 
しかし、1年生の時に「大きなかぶ」を読みながら「お話にはこういう繰り返しのパターンがあるね」という学びと、たとえば Scratch Jr でお話を作りながら「動作を繰り返させる」経験とを児童の中でうまく融合させられれば、1年生なりの「プログラミング的思考」を養うことができるのではないか。こうしたことを各学年・各教科で積み重ねていけば、或いは6年生の理科でスムーズに「電気の声質や働きを利用した道具があることを捉える学習」に取り組めるかもしれません。
 
今、プログラミング教育の先進的な実践に、全国で多くの先生方が取り組まれています。それらを単発のものとしてでなく、カリキュラムマネジメントの視点でどのように自分の学校に取り込めるか。そうした発想が必要ではないかと感じました。
 
それにしても、大塚さんの話は興味深い話題が多かったです。例えば「学校教育だと、『読書は褒められて、映画は娯楽だと思われて、RPGは叱られる』というのは、子どもからしたら解せないのではないかと。」という指摘。自分が普段、行っている授業の中でも「子どもからしたら解せない」ことがあるのではないかとドキッとしました。刺激の多いインタビューでした。

(鈴木秀樹)