公開セミナー「面白がる力を育てるために〜「学ぶ星」構想〜」

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「面白がる力を育てるために〜「学ぶ星」構想〜」
話題提供:小林晋平(東京学芸大学物理科学分野准教授)
日時:2021年3月2日(火)10:00-12:00

 「学びの目的に関する研究」(研究代表:金子真理子)による今回の研究会は、主に学生を対象に公開します。
 『ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論 』(2018年12月)、伝説のYouTube生配信「24時間ではしりぬける物理」(2020年3月)の、小林晋平准教授(宇宙物理学)が、あらゆる学問分野を超え、教育の目的と構想を語ります。
 Zoomによるオンライン開催です。希望者は、氏名と所属を明記の上、2021年2月28日(日)までに、下記連絡先までメールでお申し込みください。ZoomのURLは、前日までにお送りします。

連絡先:金子真理子(東京学芸大学 次世代教育研究センター)
mkanekoあっとu-gakugei.ac.jp *あっとを@に変えてください。

→ポスター(全2頁)



「今回の公開セミナーに寄せて」 小林晋平

問題解決能力の育成から問題発見能力の育成へと教育の流れが変わってきてはいますが、「本当の」問題を発見するためには暗に前提とされている枠の存在に気づき、その枷を外すことに躊躇しないことが必要になります。これは与えられた枠組みの中で最も効率的な目的達成方法を探るという、最適化のための技法習得とは本質的に異なるものです。

「これからの時代は答えのない問題に立ち向かわなければならない」とはよく言われることですが、高い視座からの発言に聞こえるこの文言にもある種の思考停止が見て取れます。なぜなら、1秒先の未来を完全に予測できていた時代など存在していないからです。今だけを特別だと思うのは、自分に必要だと思われることだけを選択し他者の生き様に想像を巡らせてこなかったことによるのではないでしょうか。今も昔も、自然にも人間社会にも条件変数は無限に存在し、私たちの想像は簡単に裏切られてきたはずです。

変数が無数にあることこそ効率化や最適化プログラムが最も苦手とするところですが、私たち人間はこれまでもしなやかにシグナルとノイズを切り替えながら絶えず編集作業を行ってきました。そうした予測不可能性を享受し「面白がる」力を育てるためには学校はセレンディピティ、すなわち「自ら取りに行く偶然」と出会わせる「祝祭の場」でもあるべきなのではないでしょうか。今回の公開セミナーでは、私がこれまで実践的に追求してきた学問が持つエンターテイメントとしての可能性やその実例をご紹介します。さらにそれらを発展させ、日常に学問が当たり前に存在し、他から答えを与えられて安心するのではなく、不安定な状態や予測不可能性を楽しめる力を育むための「学ぶ星」構想についてお話しし、参加者の皆様とともに深めていければと考えております。