「チーム学校」時代の教員・教育支援職の養成・研修に関わる研究

教育支援職の現状

担当:柴田彩千子

 教育支援者とは、家庭教育、学校教育、社会教育等の全ての教育対象者を支援する職に従事する人々である。本稿では、多岐にわたる教育支援職の中でも、「チーム学校」時代の教育支援職者に焦点を当て、とりわけ「学校経営」に関わる教育を支援する人々の現状について、触れることとする。 

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 上記の表1(「チーム学校」時代の教育支援職の現状)は、学校経営に係わる教育支援職を、学校経営の課題別に整理したものである。

①教員が教育課程に専念する環境の醸成
 近年の学校教育現場では、たとえば特別の教科「道徳」、小学校における英語科、プログラミング教育等の導入をはじめ、教育課程の内容が大きく変容している。こうした教育課程の実現には、教員の力量形成が必要不可欠である。しかしながら、教員の現状は、教育課程以外の仕事に費やす時間が多く、現在「教師の働き方改革」が進められてはいるものの、教員に求められる指導力の向上を図るための研修や授業研究、児童・生徒理解にかける時間の確保が難しい状態にある。そこで、教育委員会は学校弁護士と呼ばれるスクールロイヤー、スクールサポートスタッフ、主に理科や家庭科等の実験の準備や片づけを行う実験助手等を配置し、教員ができる限り教育課程に専念する環境を整備している。
 スクールロイヤーは、学校での指導の範囲を超える対応困難な問題(たとえば、いじめに起因する事件、保護者や近隣住民からの理不尽な苦情、保護者間のトラブル、児童虐待等)について、教員から相談を受け、司法の観点を踏まえた助言を行う。このようにスクールロイヤーが教員に対して法的な観点からのサポートを行うことは、訴訟リスクの回避や、教員の心理的負担の軽減につながる。現在、2007年度から本制度をいち早く導入した東京都港区教育委員会をはじめ、全国的にスクールロイヤーの配置が進んでいる。
 スクールサポートスタッフは、主に教員が担っている事務作業(教材や会議資料等の印刷業務、データの入力作業、アンケートの集計作業等)を代替する。学校現場からは、「教員が限られた台数の印刷機を使用する時間帯が集中するため、印刷業務を担ってくれるだけでもありがたい」、「特に多忙な副校長・教頭の事務作業が軽減されている」との声が挙がっている。

②部活動における生徒支援
 中学校・高校における生徒の部活動に対するニーズに対応するために、従来から外部指導員が専門的な技術の指導を、顧問の教員と連携して実施している。こうしたケースの他に、2017年度から「校長の監督を受け、部活動の技術指導や大会への引率等を行うことを職務とする部活動指導員」が、学校教育法施行規則に新たに規定された。部活動指導員の職務は、実技指導はもとより、学校外での活動(大会・練習試合等)の引率、部活動の管理運営(会計管理等)、保護者等への連絡、年間・月間指導計画の作成、生徒 指導に係る対応、事故が発生した場合の現場対応等である。部活動指導員は、生徒の部活動へのニーズに応えるばかりではなく、土日等の休暇中に開催される大会等への引率を担うことができるため、教員の勤務時間超過の軽減につながる。
 一方、近年では「ゆる部活(生徒間のコミュニケーションの促進や、運動を楽しむための部活動)」を志向する生徒のニーズに対応するために、総合型地域スポーツクラブの指導者が、学校における部活動支援を行う事例も注目されている。

③個(児童・生徒・保護者)に応じた支援の充実
 一人一人の児童・生徒あるいは保護者に応じた支援職者として、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが大きな役割を担っている。スクールソーシャルワーカーは、児童虐待、学校外での非行、家庭が原因での不登校等、学校の枠を越えた問題の解決に向けて、児童・生徒あるいは保護者に寄り添った支援を行う。たとえば、不登校の続く児童・生徒の家庭を訪問し、その原因の把握を行い、社会福祉分野の専門的な知識や技術を有する観点から、個別のケースに即した実効性のある支援を行っている。
 スクールカウンセラーの職務は、児童・生徒に対する面談を中心に、保護者からの相談への対応、事件や事故あるいは自然災害等が起こった際の児童・生徒の心のケア、教職員対象の研修や相談等、多岐にわたるものである。学校心理士スーパーバイザーは、解決困難なケースについて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに助言し、両者をつなぐ役割を担う。
 特別支援教育支援員は、学級担任が児童生徒の指導を一人で担いきれない場合に補助を行う。その職務内容は、障がいのある児童・生徒の安全確保や学習支援、教室移動や校外学習における介助や補助、周囲の児童・生徒への障害に対する理解の促進等である。

④教育課程の充実・きめ細やかな教育の充実
 より充実した教育課程の実現のために、多様な教育支援職者が児童生徒の教育に携わっている。たとえば、学習サポーターは、習熟度別授業をはじめ小集団授業における指導補助や、始業前や放課後に行われる学習相談等、一人一人の児童・生徒に対応したきめ細やかな学習支援のために活動している。実際には、将来教員をめざす学生や地域学校協働本部がコーディネートする人々(元教員や当該教科の得意な近隣住民等)が、学習サポーターとして活動するケースが多数みられる。
教育課程の充実化のためには、社会教育との連携も必要不可欠である。学校司書は、学校図書館の管理・運営をはじめ、司書教諭や学級担任(教諭)と連携して、司書としての専門知識を活かして児童・生徒に対する読書指導や調べ学習の支援等を行う。公立学校では、特に公立図書館との連携のもとに学校図書館運営が実施されているケースもある。博物館(郷土資料館、美術館、科学館、動植物園等)の学芸員は、博学連携のもと、児童生徒が博物館を活用する校外学習における講師、授業においけるゲスト講師、学校移動博物館の企画運営等を行っている。
 また、企業や各種NPOは、当該専門分野の知識や技術を学校に提供することで、教育課程の充実化を支援している。たとえば、教員に代わって情報機器会社によるメディアリテラシー教育の実施、キャリア教育に取り組むNPOが、新しい学習指導要領においてさらに大きく位置づけられたキャリア教育支援(児童・生徒と職業人(職場)を結ぶ役割)の実施等、企業やNPOが教育課程の充実化に向けた支援を行うケースが多数みられる。
 従来、多くの学校では当該授業の実施者(教員)が、上述のような地域の企業や各種NPO等と学校をコーディネートする役割を担ってきた。こうした背景下で、地域学校協働本部における活動推進員が、地域の実情に即したコーディネート能力を発揮し、学校支援活動を通した地域づくりの実現化が図られることに期待が寄せられている。他方、地域の特性を活かした教育活動を効率的に実施するため、地域連携担当教職員を配置する自治体がある。たとえば、栃木県は2014年から地域連携の中心となる地域連携担当教職員(社会教育主事有資格者)を各校に校務分掌により配置し、教員研修として社会教育主事資格の取得のための講習が位置付けられている。