本学大学院修士課程・理科教育専攻・生物学コースの修了生である中野正貴さん(現金沢大学学際科学実験センター博士研究員)、飯田秀利本学名誉教授、およびその共同研究者が、植物のMCA1と名付けられたタンパク質が重力のセンサーとしてはたらくことを突き止め、Nature Research社が発行するオンラインジャーナルScientific Reportsに発表しました。
MCA1は本学の卒業生・修了生である中川祐子さん(A類理科選修・理科教育専攻、現群馬大生体調節研究所助教)が飯田教授(当時)の指導のもとで発見したカルシウム透過性の機械受容チャネルです。このチャネルはタンパク質でできており、細胞膜の伸びや歪みを感知して細胞内にカルシウムイオンを取り込むはたらきをもっています。取り込まれたカルシウムイオンは細胞内の特定の酵素を活性化したり、特定の遺伝子を発現させたりして、刺激の種類に応じた反応を細胞に引き起こします。
重力の刺激も機械刺激の一つですので、MCA1が重力刺激を感知することが予想されました。そこで、中野さんは飯田教授(当時)とその共同研究者の協力のもと、植物を180度反転させた時に発生するカルシウム濃度の上昇を指標にして実験を行いました。その結果、MCA1を失った植物体ではその上昇が異常に低下していることを突き止めました。つまり、MCA1がその上昇に関与していることを突き止めました。
植物の茎は重力に逆らって上に伸び、根は重力に従って下に伸びることは誰でも知っていることですが、何が重力を感じるのか長い間良く分かっていませんでした。今回の中野さんらの研究成果は、植物の重力感知の研究分野をより一層発展させるものと期待されます。この分野での中野さんの更なる活躍が期待されます。
なお、中野さんは本学での研究により修士号と博士号を取得し、博士研究員としても本学で活躍しました。その時の研究が今回の論文発表につながりました。