学長就任挨拶

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 このたび、東京学芸大学学長に就任いたしました佐々木幸寿でございます。
 我が国の教員養成を長年にわたり担ってきた本学の舵取りという重責を担うこととなり、その使命の大きさに身の引き締まる思いでありますと同時に、大きな変動期を迎える教育界において本学が担うべき新たな役割の創造に着手しなければならないと決意を新たにしております。

 本学は、明治期に設立された師範学校の流れを汲み、戦後の新制大学としての再編を経て発足して以来、一貫して我が国の学校教育を支える教員養成の中核として発展してまいりました。社会や学校現場の変化に応じて教育内容や方法を不断に見直し、実践力と専門性を兼ね備えた教師の育成を積み重ねてきたことが、現在の本学の基盤を形づくっています。また、附属学校園と一体となった実践的な教育研究を基盤に、理論と実践を往還する教員養成を特色として、多くの優れた教育人材を全国に送り出してきた歴史を有しております。長年にわたり培われてきた教育への情熱と実践知、そして全国に広がる卒業生の活躍は、本学の揺るぎない基盤であります。

 教育を取り巻く環境は、急激な人口減少、教育課題の複雑化、ICT技術の進展、多様性への対応など、大きな転換期を迎えています。また、厳しさをます国立大学の財政状況は教育系大学・学部の機能の縮小をもたらしています。さらには、免許法基準の大幅な柔軟化、教育人材の多様化を促す教育政策が現下に展開される中で、教育人材をどのように確保し、育成していくのかということについて、従来の枠組みでは運用できなくなりつつあり、新しい人材育成のデザインを構築していくことが求められています。

このような時代において、本学は、従来型の教員養成機関にとどまることは許されず、「総合的で、先導的な教育の中核大学」として、我が国の教育の未来を切り拓く役割を果たしていかなければならないと考えております。

 本学は、近年、教職大学院の設置・拡大や、教育のスペシャリストを養成する日本初の教育支援課程の設置、附属学校園との連携強化などを通じて、教員養成の高度化と多様化を推進してまいりました。また、「Explayground」に代表される学外と接続した教育研究・実践の拠点を活用し、新たな学びの創出を推進しております。さらに、教職大学院での学修機会の現職教員への無償提供や現職教員のリカレント教育の充実、ICTを活用した教育の高度化など、今日的課題に応える取組を積極的に展開してきました。

 このような教育研究の実績を蓄積を基盤として、文部科学省より「教員養成フラッグシップ大学」に指定され、教員養成の先導的モデルを全国に発信する役割を担っておりますが、その役割を実質的に担っていくためには、社会改革を先導する実践、実装型の研究開発を、積極的に進めることが非常に重要になっていくものと考えております。本学としては、伝統的なアカデミックな研究を大事しながらも、さらに、「実践・実装・共創型の研究開発」に大きく踏み出していこうとしております。本学の研究開発の両輪である「教育インキュベーション機構」「先端教育人材育成推進機構」を連携させ、将来の教育の未来を構想する芽を創出しつつ、社会で必要とされる実践・実装型の研究開発を進めることは、今後の教育者養成改革、教育・研究・社会貢献の総合的展開、戦略的な国際化、ネットワークの拠点化等を進めるうえで重要な基盤となるものです。

 また、本学の附属学校園(12校園)については、伝統的に蓄積された実践研究を基に、公教育のモデルの構築、教育実習の実践開発の場として貢献して参りましたが、従来からの学校教育システムが揺らぎ、変動していく中で、今後は、さらに、多様な新しい教育ニーズに応えるための先導的な研究開発校としての役割を担っていくことが求められていると考えております。

 これらの研究開発については、教育委員会や学校現場における教育課題の解決に資する研究と実践を推進してまいります。あわせて、企業や多様な機関との協働を通じて教育に新たな価値を創出し、社会の変化に対応できる教育モデルの構築にも挑戦してまいります。さらに、全国に広がる卒業生とのつながりを本学の大きな力と捉え、その実践知を教育・研究に還元することで、人材育成の質を一層高めてまいります。

 本学が、教育の質の向上と新たな知の創出に貢献し、我が国の教育を支える「総合的で、先導的な教育の中核大学」として発展していくためには、教職員はもとより、卒業生、自治体、企業、NPO、地域社会など、多くの皆様のご理解とご支援が不可欠です。皆様と力を合わせ、東京学芸大学が名実ともに教育の中核拠点としての使命を果たしていくよう尽力してまいります。

 今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。