「チーム学校」「地域学校協働活動」と教育支援・教育協働に関する理論

チームアプローチの可能性を切り拓く教育の意識転換

大澤 克美

1. はじめに

 アクティブ・ラーニングの実施といった教育課題や、多様化・複雑化する子どもの状況に対応するため、学校教育の新たな理念として掲げられた「チーム学校」では、教員のさらなる専門性の向上を図りつつ、多様な専門スタッフを学校に配置し、さまざまな業務を連携・分担するチームによって職務を担う体制を整備することがめざされている。それは、学校の教職員構造を転換することによって、学校の教育力・組織力を向上させ、1 人ひとりの子どもの状況に応じた教育を実現することを意図した学校改革といえよう。

 このような「チーム学校」を実現するための具体的な方法・手立てであり、当面の目標ともなるチームアプローチは、先の高度化する教育課題と複雑化する教育環境に対応する過程において、教育現場に生じる問題・課題の改善に向けた新しい知の創出と共有、利用と普及を可能にする取組であることに注目すべきである。その可能性を具現化するには、チームアプローチを今まで学校教育で行われてきた問題への共同的対応や、教育課題に基づく集団的な研究・研修の延長線上でとらえないことが重要であろう。
上記の学校改革を実現するうえで 1 つの鍵となるのが、今まで学校教育の中心的担い手として多岐にわたる仕事を引き受けてきた教員の意識改革である。教員は本務ともいえる各教科の教育で責任を強く自覚し、指導法・授業技術の教授・習得により授業を独力でできるようになることが一人前への道とされてきた。授業改善をめざすチームアプローチでは、「独力で」という意識や常識を問い直してみることが必要なのではないだろうか。

 教育環境、学校環境の変化に対応するには、教科指導と生徒指導の両面からこれまでの学校の常識や教員の文化を新たな時代の教育支援という観点から検討し、改善していくことが求められている。本章では、調査から見えてきた教科指導に関わる教員の意識に基づき、チームアプローチによる授業改善の必要性や可能性を、教員間の連携・協力および教員とそれ以外の教育支援者との連携・協力という 2 つの視点から検討する。
 積極的に自己を開き他者を受容することから実現されるそれら 2 つの連携・協力について、まず日常的なチームアプローチの鍵となる学校内における教員相互の関係性を考察し、その後そこでの考察結果もふまえつつ教員以外の教育支援者との関係性を考察することから、教科指導の改善に向けたチームアプローチの展望と課題を検討してみたい。

2. 教科指導力育成に関する教員の思いと現状

 「小学校の学習指導に関する調査研究プロジェクト」が実施した小学校教員に対するアンケート1)と聞き取り調査2)、中学校および中等教育学校前期課程の教員を対象にした「OECD 国際教員指導環境調査(TALIS2013)」3) によれば、小学校か中学校かを問わず教員の教科指導についての不安は強く、指導方法や教科に関わる知識をもっと学んで教科指導力を向上させたいと思っている教員は大変多い。小学校のアンケートでは、社会科・理科・体育科の学習指導について、経験年数 11〜20 年の中堅で 7 割以上、21 年以上のベテランにおいてもおよそ 6 割以上が「指導の方法を工夫すること」に「困難と不安」を感じており、TALIS2013 では教員の自己効力感は、参加国中もっとも低くなっている。

1) 本稿で取り上げた「社会科・理科・体育科の学習指導に関するアンケート」は、「教育支援人材養成プロジェクト・学校教員調査 WG(小学校の学習指導に関する調査研究プロジェクト)」が、2013 年度に東京都、埼玉県、神奈川県で実施した。
2) 「小学校の学習指導に関する調査研究プロジェクト」が、2013〜2015 年度に北海道・大阪府・神奈川県・広島県で実施した聞き取り調査と、同調査研究プロジェクトの母体となったプロジェクトが、2009〜2012 年度に東京都で実施した聞き取り調査である。
3) 本稿では、国立教育政策研究所「OECD 国際教員指導環境調査(TALIS2013)のポイント」を参照した。TALIS2013 は、2012〜2013 年に 34 の国や地域で、中学校および中等教育学校前期課程の校長および教員を対象に行われたものである。

 しかし、多様な仕事を担うことによる多忙化と長時間勤務により、教員が自校の研究・研修以外に校外の研究会や研修会などに参加し、教科指導について学ぶのは難しい状況にある。また個人主義の浸透や多忙化により、先輩教員が民間研究団体などに誘うことをためらうようになったことに加え、職場外での研究・研修に意欲的ではない内向的な若手教員もいる。結果的に教科指導に関する日常的な相談は、大半が小学校では同学年(単級では低・中・高集団)の教員に、中学校でも同じ教科の先輩教員や身近な教員になされており、そこで教科指導への助言をもらうということが大変多くなっている。
教科指導について同じ学年・教科など校内に相談したい適切な助言者がいるか、授業研究をはじめとした校内の研究・研修が盛んであるかは、所属校の人的環境や教員文化などによりさまざまである。海外との比較では、組織内指導者による指導が多くあるとされ相対的に優位であるが、調査結果を見る限り校内のメンバーと環境次第という現実は否めない。
 教育環境がいっそう複雑化する中で、校外の研究会などにも参加できる体制を整備することはもとより、校内における教員間の相談と研究・研修を一層活性化する体制をつくることから教科指導力の日常的な向上を着実に進めることが、これまで以上に重要となる。

3. チームアプローチの実現と教員の意識転換

 聞き取り調査から、教員には経験年数が多く教科指導に熟達した「教える人」と、相対的に経験年数の少ない場合も含め若手教員、後輩教員などの「教えられる人」の 2 つの立場があることが明らかになってきた。学習指導の知識や技術を伝えることは確かに重要であるが、教員文化に深く根ざしたそうした 2 つの立場が、多忙化という状況ともあいまって経験年数や熟達度などの違いを超えて話し合い、ともに考え学び合うという関係、いわゆる同僚性の成立を阻む一要因となっていると推察される。結果的に経験年数を重ねるほど教員は、自己の抱える問題や指導上の悩みを相談しにくくなるという状況も見受けられた。
 日常的な教員間の相談と校内の研究・研修をより活性化するためには、教員間の連携・協力に見られる「教えられる人(質問する人)」と「教える人(回答する人)」という関係や意識を脱却し、たとえば問題・課題に取り組む過程では誰もが自由に疑問や意見を出し、対等に話し合えるといった同僚性に基づくインタラクティブな人間関係づくりに向けて意識転換を図ることが必要である。「チーム学校」の理念を実現するためには、チームアプローチを多忙化への人数面からの対応策に終わらせることなく、教員の意識・文化を主体的に転換させる糸口や機会にしていくことが重要であろう。
 教科指導という面から見たチームアプローチとは、担当教科・研究教科、学習指導の熟達度、関心のある領域・対象、経験年数などの違いを活かしつつ支え合い、ともに考え学び合うことで教科指導力を育むための方法であり、授業研究など臨床的で日常的な学習指導研究および現職研修のモデルを示すものでもある。チームアプローチに取り組む過程では、先の 2 つの立場を生み出す「1 人でできるのが当たり前、一人前」という従来の教員意識を、「複数で取り組むのは当たり前、連携・協力できて一人前」という意識に教員自らが転換し、それにより問題・課題の顕在化と改善・解決がなされ、メンバーの教員が効力感を味わうことが必要となる。
 教科指導に熟達した教員には、OJT において現実の問題・課題を一緒に考え、試行錯誤しつつもチームで協力し改善や解決の道筋を見出すことは非熟達者だけでなく自己の成長にとっても意味があるという認識が期待される。それにより相談時のインフォーマルなコミュニケーションもより活性化されるであろう。チームアプローチは目的に即して柔軟に行われるものであり、校内組織に位置づく同学年や同教科を担当する教師グループなどが必ずしもチームとなるわけではないが、そうした従来の教員グループのあり方にも問い直しを迫るものとなろう。
 今後の教科指導を考えた時、知識や技術の教授と習得で果たして複雑化する状況に応じる対応力が育つのかは疑問である。重要なのは、学習指導の知識技術を単に伝承することではなく、問題や課題に対する協働的な議論により知識や技術をアレンジして活用し、複眼的に省察するチームとしての協働探究活動であろう。協働の本質である相互啓発が技能の向上をともなう新たな知の探究と創出を実現し、言語化された知識や技術を現実に即して協働的・発展的に応用していく教科指導力の形成を可能にする。教員に期待されるそうした教科指導力は、今育成が求められるキーコンピテンシー等々の学力とも軸を 1 つにするものであることに留意すべきである。

4.チームによる授業改善に向けたさらなる課題

 チームアプローチは、教育現場に生じる個別的な問題・課題の改善・解決に向けた新しい枠組みでの知の創出・共有にとどまらず、参加教員による知の利用、普及という面をあわせ持つ点にも注目すべきである。教員自らが主体的に参加して獲得した知見や知恵であるからこそ、多様な問題場面で応用できるのであり、別なチームアプローチでも参加する仲間に問題改善の文脈の中で効果的に伝えることが可能になる。
 学校全体で取り組む研究・研修は、教員の教科指導力を高めるきっかけと環境をつくり出すが、同時に学校全体のテーマを設定し、年間スケジュールに沿って進めることから、時に主体意識が希薄化し形式化してしまう状況も見られる。今後は、教科指導に認められる切実な問題や課題に対して主体的にチームをつくり柔軟に取り組むチームアプローチと、学校全体の研究・研修をいかに効果的に連携させるかが、研究運営上の課題となってくる。「チーム学校」により進むであろう学校現場における新しい枠組みでの知の創出と活用は、教科教育研究のあり方にも変更を迫るものとなろう。
 各教科教育で考えれば、これまでもそしてこれからも学習指導は、教員としてのもっとも主要な職務であるため、教科指導力の向上を意図したチームアプローチを実現する際に鍵となるのは、子どもを理解して主体的・協働的に取り組む教員のチーム化である。ただ、それは必ずしも教員という職種に閉ざされたチームづくりを意味しない。なぜなら教科指導においても、教員が異なる専門性を持つ教育支援者などと連携・協力し、状況に即してチームをつくり取り組むべき問題や課題がますます増加しているからである。
 しかし、小学校での聞き取りで教員が教科指導で連携・協力する相手として圧倒的に多く出てきたのは、学年主任など同僚の教員や管理職の教員であり、教員以外ではと尋ねてあがったのがゲストティーチャーや学生らの教育支援ボランティアなどであった。教科指導が生徒指導、学級経営と表裏一体であることから明らかなように、多様な教育支援者と連携した開かれたチームづくりが求められている。今、図表Ⅰ-4-1 の太線上の人々に向けられている教員の連携意識の転換も、先の教える・教えられるという意識の転換とともに、チームアプローチによる授業改善の課題となる。これは中学校においても同様であろう。

1-4-1

 多様なメンバーとチームアプローチに取り組む教員には、ファシリテーターやコーディネーターとして、「つなぐ」という意識が期待されるであろう。しかし、その前提として教科指導に関わる問題や課題をオープンにして他の教員や専門家、支援者に相談する、また他者からの相談を受け止めるといったいわば「つながる」という意識を各教員が持つことが必要となる。先の「複数で取り組むのが当たり前、連携・協力できて一人前」という意識を持ち、「つながる」ことのできる教員が増えていくためには、他者と「つながる」経験を通してその効力を実感してもらう機会をどのように生み出すかも課題となろう。

5. 教科指導を支える専門家との連携・協力の重要性

 これからの学校教育では、インクルーシブ教育システムの構築をめざした特別支援教育の推進が課題となっており、多様な子どもの存在を前提としたユニバーサルデザインの授業づくりも始まっている。また、経済格差という現実に対応するため、学校と家庭をつなぐ支援体制の整備や、知識基盤社会を生きるうえで不可欠な情報リテラシー育成のため、ICT を活用できる指導体制の整備が急がれている。そうした現状に対応するには、養護教諭や学校司書、事務職員なども含めた教職員によるチームづくりにとどまることなく、適時スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど適切な教育支援者とつながり、問題・課題に対応できるチームをつくることが必要となる。
 しかしながら、教員に教育支援者との連携・協力について聞き取りを行うと、先にも触れたようにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに関する話はなかなか出てこなかった。とはいえそうした支援者について具体的に質問してみると、管理職教員に連絡してもらって状況や対応を相談したり、スクールカウンセラーに保護者の了承をもらい相談内容を教えてもらったりした体験を持つ教員がいること、あるいは自分自身ではないが身近でそうした連携事例を見た教員がいることがわかった。
 こうした現状は、学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが入る制度は徐々に整備されてきたものの、それらの専門家が教員にとって未だ遠い存在であることを示していると推察される。連携・協力の相手として各種の専門家が教員の意識にのぼりにくい理由は、所定の手続きを踏まないと相談ができないことや、すでに学校に入っている場合でも不定期であるということであった。それとは反対に定期的なので相談の内容や時期が限定され、関わりも限定された形になるという話も聞かれた。制度不備などの問題はあるものの相談の機会を十分に活用できず、専門家が未だ遠い存在である理由の 1 つは、教員の養成・研修の過程でスクールカウンセラーなどの仕事や役割を理解する機会が少なく、連携・協力の意味や有効性を実感した経験がないことにあるといえよう。
 また、学校外の教育支援者との連携でよく語られたのは、たとえば「学習障害」など特別な支援を要するまたは要するかもしれない子どもや、吃音などの子どもへの対応といった事例であった。そこでは学校内外の特別支援教育の教員に加えて、専門家との連携・協力の一端を聞くことができた。こうした点から見ると、小学校教員は特別な支援を要する子どもへの対応や働きかけという面から学校外の専門家との関わりをとらえていると感じられる。ただ、特別な指導を要する子どもへの連携的な支援についても、ベテラン教員でさえシステムがよくわかっていないという話があり、ここにも専門家と連携・協力して支援するしくみが理解されておらず、支援体制が十分機能していない状況がうかがわれる。
 そうした一方で数名のベテラン教員からは、専門家への相談と彼らとの連携・協力が持つ意義や可能性を聞くことできた。20 年以上の教職経験を持つある教員は、自らの体験について以下のように述べている。(下記の口述部分は表現等を一部修正した)

 昨年はちょっと支援を要するお子さんを担任した関係もあったので、スクールカウンセラーの先生と僕と 2 人でお話をしたり、今までの経過とかそのお子さんの成長してきた部分とかを確かめ合ったりしていました。さらに、今後の接し方とか、子どもが成長してきたので次の段階ではこうしましょうというような相談をしたり、アドバイスを受けたりということは、定期的にしていただいたりしましたね。
 3・4 年生で持った子ですけれども、僕自身にとっては非常にありがたかったですし、自分自身がやっていることがどうなのかなって疑問に思ったり、悩んだり迷ったりしているところで、専門の方のアドバイスであるとか、自分のやっていることに対する評価というか、そういうのを受けることは自信にもつながりますし、次の道筋がはっきりするので非常にありがたかったですね。
 やっぱり相談することが必要な時もありますし、必要な時というか、これからそういうことは絶対に必要だろうなと自分は思っていますね。

 また、同じく 20 年以上の教職経験を持つ他校の教員も、以下のように話していた。

(スクールカウンセラーなどについて)どんどん積極的に活用して、お願いしていいと思いますね。(連携の経験は)何でもありますね。たとえば去年卒業した子で、とても大変な子が隣のクラスにいて、他の学校にある通級教室を紹介しました。最初、保護者はためらっていたんですけれども、そこに行って子どもはやっぱりいい時間を過ごせたので納得できたようです。
その通級教室の先生とも連絡を密にとって、その通級教室の先生に学校に来てもらって、子どもの理解ということで校内の研修会もやりました。その子に関しては、スクールカウンセラーさんにも見てもらって。中学校も同じ

 はじめの語りは、ベテランの教員でも学校外の専門家と連携・協力することがいかに有効で大切かを、改めて教えてくれたものといえよう。また、次の語りは、連携・協力によって子どもがよりよく育った具体例を示すものであり、小学校で生まれた支援のつながりが発展・継続することにより、子どもの成長を支え続けるものとなった事例でもある。また、ある 1 人の子どもをめぐるつながりが、学校の教員全体が学び合う場をつくり出すきっかけとなったという話は、連携・協力の輪がすなわちチームが 1 つの課題に対して閉じられたものではなく、さらなる広がりを常につくり出す可能性を持つことを教えてくれる。
 個々の子どもの状況に応じた教科指導を行うためには、上記のような特別支援だけでなく、実にさまざまな問題・課題に対応した教育支援者との連携・協力が求められる。そのためには教員が、1 人で成し遂げるという意味での責任ではなく、その子にとって最善の学習環境を提供するという意味での責任を自覚し、「つながる」経験を通して指導観や授業観を自ら転換しなければならない。

6. おわりにかえて

 教科指導においては、たとえば ICT の普及にともない、誰にでも最低限の学習指導ができるといわれるデジタル教科書の普及が進むと、授業者が子どもの表面的な反応に満足してしまい授業改善への意欲が低下することが危惧される。実際には ICT とデジタル教科書を多くの教員が利用できるようになるほど、多様な子どもの学びの質に即してこれらの技術や教材をいかに効果的に活用するかをいっそう多角的・多面的に問う必要がある。多角的・多面的な考察を行うチームアプローチ自体は、対面しての議論や協働作業を大事にするため、決して簡便で効率的な方法とはいえない。しかし、情報化が進んで教育における利便性や効率性が高まるほど、チームアプローチの重要性も増すことに留意すべきである。
 そうしたチームアプローチを実現する「人とつながる・人をつなぐ」という能力・資質の育成は、これまで個々人の問題ととらえられており、教師教育、特に教員養成においてはあまり重視されてこなかった。教員相互はもとより、スクールカウンセラーなどさまざまな教育支援者との連携・協力が、教科指導の充実と改善にとって大きな課題となってきた現在、生徒指導や学級経営との一体性を認識して適切な人々とつながる能力・資質や、状況に応じて自ら関係者をつなぎ必要な組織を立ち上げる能力・資質をどのように育成するのかを、教員の養成段階から検討すべき時が来ているといえよう。
 「つながる力」と「つなぐ力」を、総括的に教員のチームアプローチ力ととらえると、その育成には下記のような能力・資質に着目すべきではないだろうか。これらは調査結果の考察に基づく仮説に過ぎないが、今まで重視されてこなかったものも多い。ここでは現状で教員が強く意識している経験年数や習熟度に着目し、養成を含めた 3 段階のライフステージに分けてチームアプローチ力の要素ではないかと推察される能力・資質を例示してみた。

小学校教員に求められるチームアプローチ力の要素と育成に関する試案


①教員志望者(養成段階):連携・協力に関する体験等を含めた基礎的な認識の育成
・学校教育における多様な連携・協力者の役割・機能に関する基本的な知識の理解
・象徴的な連携事例を活用した疑似体験で感得する連携・協力の重要性への認識
②若手教員:主に他者につながる力の育成
・具体例を通した教員・連携者・協力者に対する理解と連携・協力の可能性の理解
・連携・協力者へのシンパシーや経験年数などに縛られないリスペクトといった感性
・主体的な協働性の自覚(教員文化に見られる自己完結・自己責任という意識の転換)
・自己表現力(コミュニケーションを通して下記のネットワーク構築力へと発展)
・問題状況に対する自己判断力(自分でできることと相談すべきことの見極め)
③ベテラン教員:主に他者をつなぐ力 *他者につながる力の発展として設定
・受容性と聴取力(先ずは受け入れてしっかりと話を聞く態度・能力)
・主体的な協働性の発揮(協働的な教育活動の効果や意義に基づく他者への働きかけ)
・開かれた同僚性の発揮(教える人と教わる人といった意識の転換と他者への働きかけ)
・地域を超えた多種多様な教育支援者とのネットワーク構築力
・コーディネーター・オルガナイザー・マネージャー・ファシリテーターとしての遂行力

 教科指導において 1 人ひとりの子どもの状況に応じた教育を進めるためには、試行錯誤で時間はかかっても安易に形式化することなくチームアプローチを継続し、その過程で上記の能力・資質を随時育成し合うことが重要である。教員をめざす人にも、チームアプローチへの理解を深めるとともに、体験的に学ぶ場を授業あるいはカリキュラム外の機会に積極的に見出し、協力・連携の意味を実感できるような取組を期待したい。

※著作権者の承諾を得て「Ⅰ-4章、松田恵示・大沢克美・加瀬進編『教育支援とチームアプローチ-社会と協働する学校と子ども支援-』、書肆クラルテ、朱鷺書房、2016」から再掲されたものである。