その3 支援の極意・・・“生徒のやる気を削がず、達成感を感じてもらう”ために
授業に必要なものが揃った図書館で、司書がサポート!
図書館には右のようなファイルケースが置いてあり、引出の中には、授業で必要なものがきちんと整理されて収納されています。授業で使うワークシート、席順を示すカード、ポスター等を描くときのマジックetc.
ワークシートは、授業にあわせたパスファインダーや、テーマの設定、情報の比較など、図書館を活用するうえで必須と思われるものは、司書が作って用意してあるのです。複数の教科での授業が行われるため、図書館での授業のルールを生徒も心得るようになるそうです。たとえば、最初の授業は使った本は元の場所にもどすけれども、2時間目からは移動書架(ブックトラック)に分類番号順に戻します。こうすることで、必要な本だけ教室に運ぶこともできるわけです。
テーマ設定の場面で、司書が関わることも多いといいます。具体的なサポートの例として、「電磁波」という本には難解なテーマを選んでしまって立ち往生している生徒には、まずはわかり易い事典の電磁波のページを示します。電磁波に関する説明に使われている言葉の中から、自分がよく知っているものはないかと尋ねます。「電子レンジ」と答える生徒に、では、電子レンジのしくみを知ることから電磁波について考えてみては?と提案。このように難しすぎるテーマを、身の丈にあったものに変更するためのさりげない援助も、生徒のやる気を削がない秘訣と感じました。
「新座高校に進学してくる生徒の出身中学校には、司書は配置されているのですか?」と伺ったところ、専任司書が常駐しているから進学してくる学校はだいたい生徒の半数程度だそうです。全体に、専任の司書がいる市から進学してくる生徒は、そうでない市からの生徒よりも日常的に図書館を使うのがうまいのですが、市によってカラーが異なるのだとか。息抜きの場としてフラッと寄りつつ次々レファレンスを寄せる子が多い市もあれば、図書館を授業の場と構えてしまう子が多い市もあるそうで、図書館のあり方や司書の関わり方について、考えさせられました。
その4 使える図書館であるとともに
左の写真は、書棚の見出しです。できるだけ生徒が目的の本を探せるように配慮されたこの見出しに、この日見学していた司書一同、感心してしまったのですが、宮崎さん曰く「生徒はあんまり見ていませんよ」。ここにみんなの視線が集中するのは、司書ゆえでしょうか。でも、さっそく帰って自館の図書館の見出しを見直した司書も多かったはずです。棚の並びは、単に分類順ではなく、生徒の目線を考慮して変更を加えていますが、その案内も丁寧に作られています。
図書館では、新聞のデータベースや、インターネットにつながる環境も用意。そして新座高校も含めた6つの高校による朝霞ネットワークの存在も強い味方です。このネットワークを紹介したページを見ると、「6人の司書と約20万冊の蔵書が授業や読書をサポート!」というキャッチフレーズが効いています。各学校から提供された資料は、リスト化され、次の機会にいかされるというのも、司書によるネットワークの強みでしょう。
様々な授業のなかで使われる一方で、新たな悩みも抱えているという宮崎さん。実は貸出の利用率が減少しているのだそうです。その背景に、生徒から見て図書館が授業の場所に、また司書が教員と同じ立ち位置に見えてしまっていないかという懸念です。司書としての立ち位置を少し変え、生徒の日常的な利用にも力をいれたいと結びました。
今回の見学は、お忙しい年度末に無理をいってお願いしたものですが、司書としては、今後に役立つたくさんのことをお聞きすることができました。ありがとうございました。
新座高校の「教職員利用の手引き」は 資料アラカルト をご覧ください。
(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子)