授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。
 

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2011/11/10

図書館の先生と仲良くなることをおすすめします!

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上
お話  東京純心女子中学校 社会科教諭  田中麻衣先生
 
 
 
 
  東京純心女子中学校の学校図書館は、生徒の学び全般に関わる学校図書館として日々進化を続けています。生徒に愛される読書センターから出発して、授業で使われるための資料を提供する情報センターとしての図書館を経て、今は「読むこと」「書くこと」に積極的に関わる学校図書館として、授業者である教員とも深くかかわっています。
 10月9日、専任司書教諭である遊佐幸枝さんが執筆された『学校図書館発 育てます!調べる力・考える力』の出版記念講演会に、東京純心女子中学校社会科教諭 田中麻衣先生がお話をされました。学校図書館を授業で使う発想が全くなかったという田中先生の意識の変革ぶりがよくわかるお話でしたので、許可を得てここに掲載させていただきます。
 
 
 
 

   
-学校図書館のイメージ-

 小さい頃から本を読むことは好きだったので、学校図書館は自分の好きな本を読む場所として使っていました。それと自習室としてのイメージですね。学校で出た課題は公共図書館に行って調べていました。大学で司書教諭課程をとったのですが、このときの担当の先生が小学校の経験者だったため、中高の教員をめざす自分にとってはあまり有益な話が聞けなかったということもあります。とにかく図書館を授業で使うという発想は当時の私には全くなかったのです。

-東京純心女子中学校赴任以前の学校図書館体験-

 私立学校で社会科講師として働き始めたのですが、実は私は中学時代「社会科」が嫌いだったのです。そんな私が大学は史学科に進み、課題解決の楽しさを経験し、「暗記」ではない社会科を目指そうと思いました。生徒には調べる楽しさを経験してもらいたいと思ったのですが、そのやり方はわかりませんでした。『歴史レポート』の課題を生徒に出してみたものの、今思えば、丁寧なサポートもまったくないままの“丸投げ課題だった”と思います。課題としての価値の低さを痛感しましたが、改善方法がわからず、翌年は中止してしまったのです、

-東京純心女子中学校図書館との出会い-

 専任社会科教師として勤務するようになり、学校図書館には自分の授業の予習のために訪れました。そこで司書教諭の遊佐先生から声をかけてもらい、頻繁に利用するようになりました。夏休み前に担当学年の主任教諭から「社会科は夏休みの課題は出さないのですか?」と聞かれたので、それなら歴史上の人物について調べてレポートを書かせる課題出そうと思い、司書教諭の遊佐先生に相談に行ったらかなり強く反対されました。思いがけない反応だったので正直驚きました。でも、もともと上から言われての課題だったのであっさり断念しました。


-時事問題スピーチ-

  それで遊佐先生との関係が悪化するということはありませんでした。中学3年生の公民も担当していたので、以前からやっている『時事問題スピーチ』を引き継ぐことになりました。やりたい課題というわけではなかったので、受け身のスタートでした。でもこの時に遊佐先生と話をして、長年やっているこの課題をなんとかしたいと考えていることを知りました。生徒にとって意味のある学びにしたいと考えている遊佐先生の熱い思いに触発され、まずは夏休みに新聞のスクラップの課題を出しました。それが「木になる実になる新聞スクラップ」です。なんといってもスピーチは課題設定が大事ということで、マンダラート法をとりいれたワークシートの提案もうけ、導入しました。この年の経験は、私の考え方を大きく変えました。どうやったらいいかわからなかった状態から、司書教諭による具体的なアイデアの提示を受けたこの取組で、『時事問題スピーチ』に対する気持ちが能動的なものに変化したのです。「安易なテーマ設定はさせたくない」「結論で当たり前のことを言わせたくない」「やるなら身になるものをやらせたい」と思うようになりました。

-その後-

 引き続き中3公民を担当するようになり、夏休みの課題で行う新聞のスクラップも、後半のスピーチを意識し、新聞を読む機会を増やす・自分の視野を広める・自分の意見をまとめる力を伸ばすということを目標としました。図書館では新聞の読み方に関する授業を遊佐先生が行いました。スピーチ原稿を書かせるのは、「社会」に関連のあるネタから独自性のあるテーマを設定し、正確な情報に基づいた論理を組み立て、相手を説得できるように自分の意見を述べる力を養うためです。そのためにもテーマ設定は重要です。生徒の提出したテーマが不十分であれば、徹底的に絞り込ませるためのコメントをつけて再提出を求めています。これによって、安易なテーマを選ぶ生徒が激減しました。ワークシートをもとに、テーマを深め育ててスピーチ原稿を作成し、3学期には一人10分程度のスピーチを行い、評価をしています。
 
-学校図書館を使う意味とは-

 このような学校図書館を活用した授業を、おそらく私ひとりだったらやらないし、できなかったと思います。やはり、どのように資料を使い、授業をしたらいいのかを的確にアドバイスしてくれる存在(=司書教諭)がいればこそ、でした。
 3年間「時事問題スピーチ」を行ってきて、私が考えるこの授業の価値は次の3点です。
① 情報を収集する力がつく
② 情報を分析する力がつく
③ 自分の考えをもち、それを他者に伝える力がつく
 そして、時事問題を他人事ではなく、自分自身の問題として意識できるようになるという大きなメリットがあります。このように意味のある学びを展開しているという実感があればこそ、大変でもやりがいがあると感じています。図書館をどう使っていいかわかっていなかった私に、具体的なアドバイス・助言・苦言を呈してくれた調べ学習の玄人・司書教諭の存在はとてもありがたいものでした。
 
-まだ学校図書館を活用していない社会科教師にひとことアドバイスするなら-(これは特別にお聞きしました。)

 調べ学習をやりたいと(漠然とでも)思っているのであれば、その気持ちを(雑談風に)声に出すことをお勧めします。もしかしたら、周囲の先生方から自分が持っていない目線のアイデアがもらえるかもしれません。それから忘れてはいけないのは、図書館の先生と仲良くなることです。対話がとても大事だと思います。

 図書館の先生にお願いしたいことがあります。それは、調べ学習初心者の教員には是非とも具体的な形(例えばワークシートなど)を示してほしいということです。私が遊佐先生から示していただいたようにです。


注)田中麻衣先生の授業の詳細を知りたい方は、『学校図書館発 育てます!調べる力・考える力;中学校の実践から』少年写真新聞社刊 第4章をご覧ください。また東京純心女子中学校の音楽事例がデータベースには掲載されています。

(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子)


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