授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。
 

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2013/02/08

英語の多読学習はぜひ学校図書館で!

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上

 

都立稔ケ丘高等学校図書館 英語科 多読授業

 
 都立稔ヶ丘高校では、英語の多読で学校図書館を積極的に活用していますが、その様子を英語教諭でもある司書教諭の木場敬子先生と、学校司書の菊池保夫さんに報告いただきました。楽しそうな写真と共に、実践の様子をご覧ください。
 


 
 
 本校では授業で使ってもらえる図書館をめざしています。まだ、場所としての利用が中心ですが、2012年度は、すでに230時間の図書館利用となっています。利用の中心となっているのは、英語の多読の授業です。月曜日と水曜日に英語Ⅱと生活英語の教科で、それぞれ2時間続きの授業が行われています。授業場所は、図書館内のレファレンスルームですが、ここには約3000冊の英語の絵本が常備され授業で使われるほか貸し出しも行われています。
 
 
 

<生活英語の授業>
 生活英語の授業では、図書館にある大量の多読図書を活用し、授業で多読を行っています。生徒は、「多読三原則」(①辞書はひかない ②わからないところはとばす ③自分に合わないと思ったらやめる)に従い、自分の好きな洋書を大量に読んでいます。授業は図書館レファレンスルームにて行い、必要があれば部屋に設置したICT機器を活用しプロジェクターで映像や資料を見せることもあります。レファレンスルームには生徒の作成した本の紹介文などを飾り、多読に親しみやすい環境づくりにも工夫を凝らしています。
 また、公開講座「100万語多読入門」でも図書館を活用し、一般の人にも多読の本を利用できる機会を作っています。
 
 洋書の蔵書は約3000冊。多読の授業はこの部屋で行っている。季節ごとにディスプレイを変えている。(上記写真はクリスマス) 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

生徒が作成したPOPや紹介文を飾り楽しい雰囲気に。
年間での生徒の貸し出し回数は200ほど。
一般向けの公開講座「100万語多読入門」も行っている。
授業では本を読むだけでなく、ICT機器を活用したパワーポイントによる電子紙芝居や絵本の読み聞かせ、絵本づくりまで幅広い内容を行っている。
 
     
 
 
 
 このような魅力的な活用をされている木場先生に、以下の質問にお答えいただきました。
 
  
 1. なぜ図書館を使おうと思ったのですか?
 
 

 元々図書館の一角に「英語多読コーナー」があったのですが、本が増え手狭となったため、司書の菊池先生に相談したところ、図書館の中にあるレファレンスルームに本を置かせていただくこととなりました。私が司書教諭と英語科教諭を兼務しており、司書室にいることが多いのもきっかけのひとつです。
   
 
 
 
 2. 図書館でやってみて、どうでしたか?

 
  
 
 教室よりも図書館のほうが断然生徒の集中力が上がります。多読専用の部屋があることで、生徒も好きな本を自由に選ぶことができます。教室で多読していた時は毎回カートに入れて本を運んでいたのですが、持ち運べる本の数に限りがあり教員側の負担も大きく煩雑でした。多読の部屋は生徒のPOPや本の紹介文、季節ごとのディスプレイを飾り、アロマを焚いてリラックスできる空間を作っています。
 ICT機器も設置し、大型画面を使い皆で本を楽しんだり、個別に好きな本を読んだりと普段の授業とは違った楽しい空間を作ることが可能なのは、教室ではなく図書館で活動しているからこそだと思います。生徒は授業時間は多読に集中し、休憩時間は図書館にある日本語の本や雑誌を見て上手に気分転換をしているようです。また、「図書だより」に毎回多読の本紹介を掲載していただいたことで、それを読んだ英語科以外の教員にも多読が徐々に広まりつつあります。
 
  
 
3. 今後図書館をどのように活用したいか、他の学校の英語科の先生にこんな利点がありますよ・・・というのがあれば。
 
  今後は・・・

 英語の本と図書館の日本語の本を関連づけて読書をさらに豊かなものにできればと考えています。洋書を『多読三原則』(*多読三原則「①辞書はひかない②わからないところはとばす③つまらなくなったらやめる」)に従って読むと、最初はどうしても易しいレベルの本が中心となります。話もシンプルな内容が多くなるため、中には難しい本は読めないけれど、易しい本には飽きてしまう生徒も出てきます。その時に例えばSteven Jobs氏の伝記を易しい洋書で読み興味を持ったら日本語でより詳しい内容の本を読んで知識を深めると知的好奇心も満たすことが出来、多読にも良い影響が出るのではないかと思います。司書の先生に協力していただき、今後さらに充実した読書活動を行えたらと考えています。
 
  英語科の先生に・・・

 本を読む場所はやはり図書館が一番ふさわしいと思います。図書館にいるだけで生徒も本を読む姿勢になりますし、教員もリラックスした雰囲気で『多読支援三原則』(*多読支援三原則「①教えない ②おしつけない ③テストしない」)にそって生徒にアドバイスすることができます。教室や教科の部屋に多読の本を置いておくと管理面が心配ですが、図書館に本を置くと、司書の先生や複数の教員の目があることで本の紛失が少ない気がします。図書館が空いているときは自由に多読の本を読んだり借りたりすることができるので、授業以外でも洋書を借りる生徒が増えました。また、図書館での休憩時間の様子などから生徒の読書傾向を知ることができるため、そこで得た情報は英語の本を勧める際に大いに役立っています。多読は英語科だけで行うより、図書館と連携して行うほうがよりスムーズに進めることができると思います。
 

学校司書の菊池さんにも、“多読授業を図書館でやってよかったこと”を、お聞きしました。

 現在、多読関係の授業は週2回2時間ずつ図書館内の一室で行われています。選択授業ですので多くの生徒が授業のために図書館に来るわけではないのですが、それでも授業のためにこれまで図書館を利用したことのなかった生徒が図書館を利用するきっかけになったりしています。
 
 (*左写真の、右手に見えるドアが、レファレンスルーム入り口です。)
 
 
  また、継続して図書館を利用して授業を行う教科が出てきたことで、他の教科でも授業で図書館を使うことが増えてきました。2011年度、103回193時間だった授業での図書館利用が、2012年度は2月中旬の段階で158回273時間にまで増加しています。これまでよく図書館を利用していた国語表現もより多く利用するようになっていますし、情報や理科など新たに授業で図書館を使うようになった教科も出てきています。自習でもよく使われるようになりました。課題が用意されているので、生徒は静かに取り組みます。
 同じ時間に教科が重なったりしますが、本校は少人数授業である上に、図書館がある程度の広さを持っていますので、何とかやりくりができています。
 教科から図書館を使いたいという申し出があった時には、「どんどん使ってください」と歓迎しています。図書館で授業をするのが当たり前になるようにしたいと考えています。そのきっかけとなったのが、図書館のレファレンスルームでの英語多読の授業でした。
 
(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上)
 



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