学長室だより

Ride on Time

今週の"サンディ・ソングブック"(東京FM)で、9月19日で"Ride on Time"が出て40年になると、山下達郎さんが話していました。この曲をはじめて聞いた時、なんと洗練された音楽か!、全然センスが違うと思いました。"...心に火をつけて飛び立つ魂におくるよ、Ride on Time"、曲、歌詞ともに、次々と、ひろびろと、視界が広がっていくような疾走感と爽快感のある何ともかっこいい曲だと、今聞いても思います。

同じように洗練という点で、これまで聞いたことがない!と思った音楽に、"Ride on Time"よりちょっと前になりますが、荒井(松任谷)由実さんの"ルージュの伝言"があります。ただ、これは、聞いた時、なんと洗練された音楽!と思うとともに、なんだ、これは?!という感じもありました。というのは、われわれ=私の生活様式とはまったく違う!という感じだったのです。"バスルームにルージュの伝言..."といっても、だいたいルージュの意味も知らなかったし(大学の女友達に教えてもらいました)、ついこの間までぼっとん便所というアメニティ環境で暮らしていた田舎の青年には、バスルームに口紅で伝言といっても、あまりうまく像が結ばないのでした。"あの人のママに会うために今ひとり列車に乗ったの...(浮気な恋を)ママから叱ってもらうわ、マイ・ダーリン"というのも、彼女のファッションなどとともに、ああぁ、東京の私学の女子(多摩美)ってこういうんだと、まばゆいばかりの、全く遠い世界の別の生き物のように思えました。

なんだ、これは?!と思った音楽には、もうひとつ、サザンの"勝手にシンドバット"があります。コミックバンドのような扱いもあったといいますが、確かにあのファッションにはそんなこともあったのかとは思いますが、その後の活躍を約するような内容の曲だったと思います。歌詞も意味不明と言われましたが、そうといえばそうですが、クールですこしHな桑田ワールドの天才性をハナから見せつけて登場したのだと思います。歌詞の中に出てくる湘南、茅ケ崎というのも、なんとも格好よかった...。

私はほとんど洋楽しか聞かないのですが、この3人の曲は、その後も聞いています。それにしてもこの3人の凄いことは、いまだに現役で、われわれのような世代から、今の若い人までファンがいることです。3人とも60歳半ばです(一番上が山下さんで67歳、荒井(松任谷)さんはそれより一つ下、桑田さんは64歳で、私と同学年です(!))。60代半ばの人間と、20代(あるいは10代)の子とが、同じ音楽を聞いているということが、はやりすたりのあるポピュラー音楽の世界に、これまであったでしょうか?9月19日の放送でも、22歳の人が、"Ride on Time"40年ということを知っていてリクエストしていました。われわれは若い人たちにつきあってもらう仕事ですが、教育とか学問とかを離れた時に、この人たちと、話し合う共通の話題があるだろうかと思うことがありました。常人のうかがい知れない、また、見せることのない節制・精進が、この人たちの活躍の背景にはあるのだと思います。