2020年アーカイブ

学ぶということ、、、

いつのまにか12月となり、今年を振り返る時期となりました。今年はともかくコロナの対応に追われた年でした。大学も緊急事態宣言を受けて、大学を閉じるということをしました。おそらく開学以来初めてのことと思います。学生の姿のまったくない閑散とした大学の光景というのは、なんとも異様なものでした。

季節も過ぎていったはずなのに、何かのっぺらぼうの一年間だったような、たしか夏はいつまでも暑かったと思うのですが、それもなんだか、あったようななかったような...。おりおりの行事、人の動きと関係するような様々な出来事というのが時の経過にとって大事なのだなと痛感しています。

学生のみなさんは、新入生もちゃんと履修登録をしてくれ、よく頑張ってくれました、しかし、ほんとうに可哀そうなことをしたと思います。前回の学長室だよりに書きましたが、4年生は最後の一年を、何かわけのわからないうちに終わってしまったような感じをもっているのではないかと思います。

一昨日、夜のNHKのニュースで、フランスの映画監督のパスカル・プリッソンさんの"94歳の小学生"という映画が紹介されていました(https://www.gogo-movie.jp/)。これは、ケニヤの小さな村でずっと産婆をつとめてきた94歳の女性、"ゴゴ"(おばあさんの意)が、ひ孫たちが学校に行っていないことを知り、ひ孫たちに就学を勧めようと自ら小学校に入って手本を示そうとする姿を追ったものでした。それは、自分が学校で学ぶことが許されず、それゆえに学ぶことの大切さを痛感していたからで、子どもたちと同じ緑色の制服を着て通学し、学ぶ姿が紹介されていました。彼女の部屋の扉には「学ぶことに年齢は関係ない」という看板が掛けられているそうです。さらに、番組では、通学に大変な困難を抱えながらも、健気に学校へ通う子どもたちの姿を撮った"世界の果ての通学路"(http://www.sekai-tsugakuro.com/)という同じ監督の映画も紹介されていました。その中では、サバンナの象の群れを避け、草陰に隠れ隠れしながら片道2時間かけて通学(!)するケニヤの兄妹の姿の映像が紹介されていました。その少年は、現在、国の法科大学院の学生になっており、インタビューに答えて、自分の将来は学問にかかっている、学ぶことは毎日闘うことなんだと話していました。監督は、当たり前のようになっている学べる幸せ、学校に行ける幸せをあらためて感じてほしいとコメントしていました。私は不勉強にもこれらの映画のことを知りませんでした。番組の中でちょっと紹介されただけでしたが、感動しました。教育、そして学ぶということの原点というものをあらためて思い知らされた思いです。

我々は幸いにも教育者を養成する仕事についています。子どもたちを教育する学生を教育する仕事です。学生自身が学ぶ喜びを感じながら、子どもたちに学ぶ喜びを伝える教育者になってほしいと思います。そうした大学づくりを進めていきたいと思います。

コロナ禍はなかなか明けませんが、引き続き、学生のみなさんの学修、キャンパスライフの保障に、学長、理事、副学長一丸となって努めていきたいと思います。本年もいろいろありがとうございました。来年もよろしくお願いします。よいお年を

教職特待生との懇談

12月9日、16時から17時、教職特待生と話す機会(「学長と教職特待生との懇談会」)がありました。教職特待生とは、本学独自の制度で、学校教員になることを強く希望しながら、経済的な理由で大学進学が困難な学生を支援するもので、平成21年(2009年)度入学生より行っており、これまで96名の学生が特待生として採用されています。支援の内容は、入学金・授業料・学生寮に入る場合の寄宿料の全学免除、教職奨学金(半期20万円の4年間)の支給、学生は必携となっているパソコンの無償貸与などです。

例年ですと、軽食をともにしながら、歓談するのですが、コロナ禍の中でどうしようかと思っていましたが、特待生同士が顔を合わせるのは年に1度のこの機会しかないということで、課長をはじめ学生課の職員が頑張ってくれて、感染予防対策を万全に行い、1時間だけということにして、対面で行いました。奨学生23名のうち、19名が参加してくれました。執行部からは、私と、佐々木教育担当理事、濵田学部教育・学生支援担当副学長が出席しました。

学長に就任して、また、コロナ禍となってしまったので一層、学生のみなさんと接する機会が少なくなっていましたので、私にとっても、学生と話すことのできる貴重な機会でした。

コロナ禍で、アルバイト収入がなくなる、減るなどしている中でみなよくやっていました。前の学長室だよりで、1400人の実習をきちんとやり遂げた、これは本学の誇りと書きましたが、実際のところどうであったのか気になっていたので、4年生を中心に聞いてみました。危惧していた実習に対する不全感のようなことを話す学生さんがいなくてほっとしましたが、日常的な子どもとの日常的な触れ合いがないと、授業がうまくできないということがわかった、実習期間に入る前に、クラスが同じだったり、同じ教科だったりする実習生同士の打ち合わせができなくて準備不足になってしまったところがあったなど、ああ、やはりそうであったか、、、と思わされる感想がありました。しかし、一方では、触れ合いの少なさを補うためにメモやり取りなどを頻繁に行ったなど、若者らしい頑張りを聞くこともできました。

そうした中で、卒業式はできるのでしょうか?と聞かれた時には、胸を衝かれました。めぐり合わせとはいえ、大学生活最後にこうしたことになってしまったのは、何とも可哀そうだと思います、学生最後の年であれば、友達と大学でしたいこともあっただろうし、卒業式、卒業旅行などもいろいろ考えていることがあるんだろうと思います。もちろん、他の学年の学生も同じだとは思いますが。卒業式は、卒業生・修了生はみな出席して開催できる方法を考えているところです、何とか工夫して行いたいと思っています。

奨学生の支援には、本学の基金も原資としており、最初に記しましたように本学の独自の取り組みとして、関係諸方面から注目もされていたのですが、令和2年度より国の高等教育修学支援新制度が開始され、低所得者に対する支援が拡大されるということでしたので、今年度で募集を停止しました。制度は終了してしまいますが、特待生のみなさんの今後の活躍が、この制度の意義を体現してくれると思っています。引き続き期待しています。