「チーム学校」「地域学校協働活動」と教育支援・教育協働に関する理論

社会教育と学校との連携

倉持 伸江

1. 学校・家庭・地域の連携が求められる背景

 現代の教育において、学校・家庭・地域の連携は基盤として位置づけられている。2006 年に改正された教育基本法では第 13 条に「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」の条文が新設され、「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」と規定された。これを受け、2008 年に改正された社会教育法では、第 3 条 3 において「社会教育が学校教育及び家庭教育との密接な関連性を有することにかんがみ、学校教育との連携の確保に努め、及び家庭教育の向上に資することとなるよう必要な配慮をするとともに、学校、家庭及び地域住民その他の関係者相互間の連携及び協力の促進に資することとなるよう努めるものとする」ことが示された。このように、学校・家庭・地域の連携において、社会教育が積極的な役割を果たしていくことが求められているのである。
 学校・家庭・地域の連携が求められる理由はさまざまである。まずあげられる
のは地域ぐるみで子どもの成長を支援する環境をつくるということである。子どもの「生きる力」は、学校教育のみならず、家庭での家族とのふれあい、地域の人々との交流などさまざまな活動が相互的・総合的に展開することで育まれる。地域社会のつながりや支え合いの希薄化、家庭の孤立化などの現代社会の状況の中で、学校・家庭・地域社会が十分な教育的機能を発揮すること、すなわち地域の教育力を高めることで、子どもたちの豊かな人間性、社会性、規範意識、コミュニケーション能力を育成し、安心・安全な教育環境が形成されていく。
 また、子どもの成長や学びを地域全体で支援していくことは、活力あるコミュニティの形成にもつながっていく。2013 年 6 月に閣議決定された国の第 2 期教育振興基本計画では、教育行政の 4 つの基本的方向性のひとつ「絆づくりと活力あるコミュニティの形成」において、学校と地域の連携・協働体制の確立が位置づけられている。地域住民が参画し地域の特色を活かした事業を学校を核として展開することで、まち全体で地域の将来を担う子どもたちを育成するとともに、地域コミュニティの活性化が図られていく。学校と地域が連携した取組が、地域の人材や教育資源の組織化、さらには地域の大人の学びの機会の充実にもつながり、地域振興や地方創生を進めていくうえでも期待されているのである。

(1)学校・家庭・地域の連携による事業

 国は、学校・家庭・地域の連携に関する施策を進めてきた。その主なものは次の通りである。
子どもたちの放課後、休日などの学習やさまざまな活動の充実のために実施されているのが、「放課後子ども教室」や土曜日の教育活動支援である。「放課後子どもプラン」は、文部科学省の「地域子ども教室」と厚生労働省の「放課後児童クラブ(学童保育)」が連携して 2007 年から実施されている。地方公共団体が実施する「放課後子ども教室」は、放課後に子どもたちの安心・安全な遊びと学びの場を提供することを目的に、学校施設などを活用し、地域住民や保護者の、基本的にはボランティアによって学習やスポーツ、文化活動など多様な体験・交流活動が行われている。平成 26 年度には、全国で 1,135 市区町村、11,991 教室、東京都でも 62 基礎自治体 23 区 26 市 5 町 8 村のうち、52 市区町村、1,106 教室が実施されている。また、文部科学省は 2014 年から「地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育支援体制等構築事業」を進め、「土曜教室」などの名称で多彩なプログラムが展開されている。
 「学校支援地域本部」は、学校のさまざまな教育活動を地域住民のボランティアが組織的に支援するもので、2008 年から実施されている。活動の内容は、授業補助や教員補助といった授業での学習支援、部活動の指導補助、図書館の整備や花壇の手入れといった校内の環境整備、登下校の見守り、学校行事の支援など幅広く、「地域につくられた学校の応援団」と位置づけられている。ボランティアには保護者を含む地域住民、PTA 関係者、退職教員、大学生、青少年・社会教育団体、NPO、企業関係者など多様な人々・組織が関わり、地域の状況にあわせた展開が期待されている。全国では、平成 26 年度で 628 市区町村、3,746 本部設置され、うち東京都は 23 市区町村 535 本部となっており、杉並区や小平市などモデル地区として活発に活動を展開している。
 これらの事業は、自治体の社会教育・生涯学習部署の担当となっていることが多い。学校支援ボランティアの掘り起こしや育成、組織化、しくみづくりを通して活動に関わる多様な主体をネットワーク化し、地域課題の共有へとつなげ、活動を持続可能なものとしていくことなど、社会教育の専門性が活かされている。
 「学校と地域との連携・協働を推進する体制づくりの取組は、子どもたちの教育環境を改善するのみならず、多くの地域住民が、学校支援や放課後等の活動に参画するなど、地域住民の間の絆をより強く結びつけ、活力あるコミュニティの形成にもつながって」おり、「社会教育行政は、学校支援地域本部や放課後子ども教室など学校教育との連携・協働については、大きな成果をあげている」1) と評価されている。

1)中央教育審議会生涯学習分科会「第 6 期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」2013 年 1 月

2. 社会教育施設と学校支援

 社会教育施設とは、人々の学習活動を推進するための地域における施設であり、公民館、図書館、博物館などをはじめとし、青少年施設、女性・男女共同参画教育施設、社会体育施設など、一般的に物的・人的・機能的条件を備えているものを指す。また、社会教育法などによって規定されている社会教育行政以外の管轄にあるものとして社会教育関連施設があり、多様な運営主体によって人々の学習活動を援助したり、必要な情報・知識が提供されている。ここでは、公民館・博物館・図書館と学校との連携について見ていくこととする。

(1) 公民館・公民館類似施設

 住民同士が「つどう」「まなぶ」「むすぶ」ことを促し、人づくり・地域づくりに貢献するのが、公民館である。社会教育法に基づき市町村によって設置されるが、この他に、「自治公民館」と呼ばれる住民たちが自主運営する公民館に似た機能を持つ施設がある。公民館は「Kominkan」としてアジア地域を中心に展開されているコミュニティ学習センター(Community Learning Centre:CLC)のモデルとなっていて、海外から注目されている。公民館は、講座の開設、討論会・講習会・講演会などの開催、図書・記録・模型・資料などを備え、その利用を図ること、体育・レクリエーションなどに関する集会の開催、各種団体・機関などとの連絡、その施設を公共的利用に供することなどを行っている。また公民館類似施設として、社会教育会館、生涯学習センターなど多様な形態で地域における住民の自主的な学習を支える拠点が設置されている。
 公民館と学校との連携については、地域のニーズや状況にあわせて、多様な実践が展開されている。子どもや親子、子育て中の親を対象とした講座や学級の実施によって子どもや親の学習を支援している。また公民館を拠点に自主的な活動を展開する団体・グループを学校支援の活動とつなげるなど、学校と地域をコーディネートする役割を果たしているところもある。
 たとえば、国分寺市では、公民館を拠点に「もとまち地域会議」が組織化されている。「もとまち地域会議」は 2006 年 3 月に第 14 期もとまち公民館運営審議会委員によって呼びかけられ、地区小・中学校、各 PTA、保育園、児童館、各団体と公民館利用者が参加した、地域の問題を共有し、さまざまな場面で協力し合える関係を築くことを目的とした組織である。情報、意見の交換の場として、2 カ月に 1 回定例会が開催されているが、会議や講座だけでは状況が変わらないという声のもと、運動会が行われるようになった。地域会議に参加し、運動会の運営に関わる地域の団体は現在、小学校、小学校 PTA と PTA の OB・OG、公民館、図書館、児童館、学童保育所、保育園、社会福祉協議会、ファミリーサロン、民生委員、赤十字奉仕団、障がい者支援 NPO、公民館で活動するサークルや自主グループ、近隣の複数の自治会・町内会、老人会、婦人会、商店街、東京学芸大学である。会議の世話人を地域住民、事務局を公民館が担当している。

(2) 図書館

 図書館は、「図書館法」に定められた社会教育施設であり、記録資料(メディア) を収集、整理、保存し、資料ならびに資料に記録されている情報を人々に提供することを基本的な目的・機能としている。市区町村立の公共図書館は平成 23 年度の調査で 3,274 施設あり、年々増加している。また地域住民の身近にあって住民の多様な額数ニーズに対応した利用度の高い社会教育施設であり、図書館の帯出者数(図書を借用して館外へ持ち出した者の延べ人数)は平成 7 年度間の
120,011 千人から、平成 22 年度間には 187,560 千人へ増加している(社会教育調査より)。
 公共図書館と学校教育の連携・協力に関する議論は、戦前期に遡ることができる。1950 年に制定された図書館法の第 3 条に、「学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと」(第 4 項)「学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し協力すること」(第 8 項)が規定され、公共図書館と学校・学校図書館との緊密な連携・協力の法制度的基礎はすでにつくられていた。
 しかしそうした連携・協力が現実的な意味を持つようになるのは、学校図書館が図書館としての実態を備え、実践と呼べる活動を展開しはじめる 1990 年代以降のことである。とりわけ 2001 年の子ども読書活動推進法の制定とそれに基づく子ども読書活動推進計画の策定は、連携・協力を政策のレベルで推し進める契機となった。国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第 3 次)」
 (2013 年 5 月)は、「図書館は学校図書館との連携・協力体制を強化し、団体貸出しや相互貸借を行うとともに、図書館職員が学校を訪問し読み聞かせを行うよう努める」と指摘し、これを参酌して策定された地方自治体の子ども読書活動推進計画の多くが、公共図書館と学校教育の連携・協力に言及している。
 こうした流れの中で、現在多くの学校・学校図書館が公共図書館との連携・協力を実施している。文科省の「学校図書館の現状に関する調査」(平成 24 年度) によれば、小学校の 76.5%、中学校の 49.8%、高等学校の 46.5%が連携・協力を実施している。
 しかしその実施内容は、自治体、学校図書館ごとに大きなばらつきが見られる。都内にもいくつか積極的に学校との連携を進める図書館があるが、ここでは調布市を紹介しよう。調布市では、「調布市子どもの読書活動推進計画」を策定し、それに基づく学校支援活動を次のように行っている2)

資料提供、レファレンスサービス、図書搬送システム/図書館利用ガイダンス、本の紹介、読み聞かせの実施(年間51 回)/市内全小中学校対象とした調べ学習への支援(114 件)/ブックリストの作成(学年別リストなど)/職場体験・職場訪問の受け入れ/小学校教育図書部会への参加

 また、市教育委員会指導室に学校図書館支援センターを設置し、公共図書館との連絡連携を担当している。

2)東京学芸大学生涯学習教室『生涯学習・社会教育関連部局と学校との連携に関する実態調査―東京都内市区町村を対象に―(第一次報告)』2014 年 3 月 31 日

(3) 博物館

 博物館は、「博物館法」(1951 年)に定められた社会教育施設で、「もの」を通した人々の生涯学習の場である。歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料の収集、管理・保管、調査研究、展示・教育普及活動等を一体的に行い、実物資料を通じて人々の学習活動の支援を行う社会教育施設で、総合博物館、科学博物館、歴史博物館、美術博物館、野外博物館、動物園、植物園、動植物園、水族館など種類もさまざまである。社会教育調査によると、平成 23 年時点で博物館・博物館類似施設は合わせて 5,747 館あり、年々増加傾向にある。
 博物館と学校の連携については、国内でその数がもっとも多い歴史系博物館だけではなく科学館や美術館などでそれぞれの専門領域の特色を生かした学校との連携活動が展開されている。授業の一環としての見学対応や博物館資料の貸出しなどの支援はもちろん、出前授業などのアウトリーチ活動、教員対象の研修会などその様態も多様である。
 これらの背景には、教育活動を重視する地域博物館論やチルドレンズミュージアムの考え方が現場で認識されはじめたことや、国の教育政策の転換などがある。生涯学習体系への移行に関する提言を受け 1989 年に改訂された小・中学校の社会科学習指導要領に初めて博物館の活用と「博学連携」の推進が盛り込まれたことを皮切りに、社会教育審議会中間報告「博物館の整備・運営の在り方」
 (1990 年)で「学校教育との関係の緊密化」が提唱され、その後の指導要領改訂でも理科や美術、総合的な学習の時間での博物館の積極的な活用が位置づけられた。こうした中で博学連携は積極的に取り組まれ成果をあげているが、これまでの各館における取組は学校との連携・支援を行うことのできる知見と専門性を持つ学芸員の配置と養成が課題の 1 つとしてあげられる。
 ここでは公立博物館と学校教育との連携の事例として、府中市郷土の森博物館での活動を紹介する。府中市郷土の森博物館は都内有数の野外展示施設を含めた地域博物館で、学校の見学内容の計画の際に学芸員が相談にのるなど、学校教育支援の体制が整っている。常設展示開設は学年や学習テーマに沿ってさまざまなバリエーションで対応する他、昔の道具を実際に使ってみる「ふるさと体験学習」活動も可能で、石臼粉挽き体験は、ボランティアが対応する。子どもたちが、地域の農家、ボランティア、親、教員、学芸員などともに、動態保存されている昔の道具を使いながらコメづくりに挑戦する体験型教育活動が、「こめっこクラブ」である。学校教育との連携も含め、地域における稲作文化(景観も含む)の継承・保存をも目的とする同館独自の活動として長年取り組まれている。

3. 社会教育・生涯学習領域における、支援人材に求められる役割と力

 変化の激しい社会の中で、子どもにも、そして保護者にも、地域住民にも、「生涯を通じて主体的に学ぶ力」が求められている。学校と地域が有機的につながり、地域社会における人づくり、絆づくり・地域づくりを進めていくためには、子ども、保護者、地域住民が、それぞれの生活の課題と、地域社会における課題を自らのこととしてとらえ、学習を通じて地域社会に主体的に参画し、活躍することが求められる。学校を拠点に、地域の多様な人々・組織が互いに学び合い、1 人ひとりと地域コミュニティの両方が成長し、持続的に発展していくためには、多様な地域資源をつなぎ、主体的に学び合う環境をつくりだすことが必要となる。学校支援に不可欠な地域のボランタリーな担い手をどう発掘し、育み、持続させるか、多様な主体からなる学び合うコミュニティをどう形成していくかという支援は、知識や技術を「教える」とは異なる専門性が求められることは明らかだろう。
 社会教育施設や社会教育・生涯学習関係の職員などの支援人材には、多様な考えを有する地域住民・関係団体などの調整役となり、連携や協働を推進し、ネットワークを形成するコーディネート能力、地域住民などの意欲・力を引き出すファシリテート能力などが求められるといえる。また、持続可能な活動としていくために、さまざまな組織と協働して計画を策定し、しくみや制度をデザインする力、計画を実現し、相互評価し、次の展開へとつなげていく力も重要である。こうした能力は、短期間に座学で形成するのは難しいだろう。実践と省察、現場と理論の往還を重ねていくカリキュラムが求められる。

[引用・参考文献]
・梶野光信(2015)「教育支援コーディネーターと社会教育主事の連携による教育コミュニティの創造」日本社会教育学会編『地域を支える人々の学習支援―社会教育関連職員の役割と力量形成』東洋館出版社、pp. 64-74
・倉持伸江(2015)「地域社会教育実践と連携した学習支援者の養成―東京学芸大学の取り組み」日本社会教育学会編『地域を支える人々の学習支援―社会教育関連職員の役割と力量形成』東洋館出版社、pp. 131-142
・笹井宏益・中村 香(2013)『生涯学習のイノベーション』玉川大学出版部
・社会教育行政研究会(2013)『社会教育行政読本―「協働」時代の道しるべ』第一法規
・東京学芸大学生涯学習教室(2014)「生涯学習・社会教育関連部局と学校との連携に関する実態調査―東京都内市区町村を対象に―(第一次報告)」
・東京都教育庁地域教育支援部(2014)「平成 25 年度区市町村生涯学習・社会教育行政データブック」
・中央教育審議会生涯学習分科会(2013)「第 6 期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」
・日本社会教育学会編(2011)『学校・家庭・地域の連携と社会教育』東洋館出版社
・日本社会教育学会編(2015)『地域を支える人々の学習支援―社会教育関連職員の役割と力量形成』東洋館出版社
・文部科学省生涯学習政策局社会教育課「学校・家庭・地域の連携協力における社会教育の役割について」中央教育審議会初等中等教育分科会(第 91 回)・教育課程部会(第 89 回)合同会議資料、平成 26 年 9 月 24 日
・文部科学大臣「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について(諮問)」中央教育審議会、2015 年 4 月

※著作権者の承諾を得て「Ⅲ-2章、松田恵示・大沢克美・加瀬進編『教育支援とチームアプローチ-社会と協働する学校と子ども支援-』、書肆クラルテ、朱鷺書房、2016」から再掲されたものである。