2025年アーカイブ

2月になってしまいました...

年が明けて随分と経ち、2月となってしまいました。少し書き物等が立て込んで、「学長室だより」が後回しになってしまいました。大変失礼しました。年が明けてからこの間にしていたこと等を記して、本年の最初のごあいさつとさせていただきます。

昨年末に、国立大学協会の広報誌である『国立大学』の取材を受け、"日本の未来の鍵を握る教員養成"ということで、インタビュアーの井田専務理事(滋賀大学元学長)とお話をしました。おやさしく聞き上手な井田先生に甘えて、いろいろと取り留めのないことをお話してしまいました。今年に入り、井田先生と一緒にインタビューにいらしたライターの方が苦労してまとめてくださったゲラが届いたのですが、大幅に修正することになってしまい、大変に申し訳ないことになってしまいました。が、取材を受けた後に、悔やんでいた部分――インタビューの最後に、ライターの方から「結局どういう教員を育てたいのか?」という問いかけを受け、あまりに真正面からの問いであったので、咄嗟にうまく答えられなかったのでした――にも手を入れ、多少形を整えることができました。『国立大学』が出されたら、HPなりで紹介したいと思います。

1月末に東京で開かれた全国都道府県教育長協議会で、日本教育大学協会の会長の立場で、教育長の方々と意見交換を行いました。当方からは、教員養成大学・学部にとって教員就職率アップは至上命題なので、是非とも多くの学生を採用してほしいということや、教員志望の学生が一般企業に流れるのを防ぐために教員採用試験の早期化などが講じられている中で、3年次から教員採用試験の受験を認めるという方策は、学生の"教師になる"という動機づけを維持し、高めることができるので是非検討してほしいこと等、話しました。教育長の先生方からは、「教科の中には、教員養成大学・学部でも教職課程維持が危ぶまれているものもあるが、大丈夫か?」、「教職志望者を増やすためには、高校生への働きかけも必要なのではないか?」、「3年生からの教員採用試験受験を認めることは、大学のカリキュラム上問題はないのか?」等、いずれも現在の教員養成の問題の中心に触れるご質問・ご意見を頂きました。この意見交換は、私の前の出口学長の時代に始めたもので、私が学長になってからしばらくの間は、コロナ禍のために対面では行われていなかったのですが、昨年から対面での開催が再開されました。教員採用側のご意見を広く全国レベルで一挙に聞くことができる稀有な機会なので、これからも続けていく価値のあるものだと思います。

また、この1月から中教審の教員養成部会の臨時委員となり、1月末に教員養成部会の議論に参加しました。今回は委員の補充などを行った最初の部会ということで、委員全員が諮問に対する意見表明をせよということでした。諮問は、教職課程、採用・研修、社会人等登用の3点のあり方について、制度の根本に立ち返って検討するというものでしたが、諮問の重大なテーマには、「教師不足」にどう対応するかがあると思います。時間が限られていましたので、私は、教職課程にかかる部分について話しました。教職課程にかかる部分では、現行の教職課程で求めている単位数が多すぎて、学生に敬遠されているのではないか、それにより教員の志願者が減っているのではないか、ということと、少子化の中で教職課程の維持が困難になり、必要とされる教員数を輩出できなくなる事態が生じるのではないかということが、主要な論点のように見えました。そのため、前者については、もし単位数を減らすなら、今の2種免許状を標準とすれば20単位程度は負担が軽くなるが、それでは教師の質保証が十分でないきらいもあるので、教員養成フラッグシップ大学で開発している科目を4~8単位ほど積み増すようにしたらどうかということを、後者については、今後は国公私立の設置者を超えた連携協働が必要・必至となり、その場合に国立大学はその中心を担うことになるだろうというようなことを述べました。この連携協働については、地方では特に必要となってくると思います。国立大学が私立・公立大学と連携協働し、国立の単科大学は、そうした地方での連携協働を、もう少し大きな地域レベルで支えていくというような連携協働が、ひとつのスタイルかなと思っています。この部会での議論については、随時紹介していきたいと思います。

この年末からのアメリカの大火事や日本海側の豪雪等、地球環境の激甚たる異変が見られる中で、ウクライナ、ガザでの戦争はなかなか収まらず、さらに残念なことには、世界には強権的な指導者が増えています。自然と人間を巡る状況は、明るい展望が見られるとは言い難いものとなっていますが、教育の力を信じ、教育こそが人間の未来をつくるということを胸に刻み、"有為の教育者の養成"という使命を果たしていきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。