2024年アーカイブ

本学卒業生の角田夏実さんが金メダル獲得!

角田夏実さんがパリ・オリンピック女子柔道48㎏級で優勝、金メダルを獲りました。私は、今回のオリンピックの日本の柔道で、金メダルがもっとも確実な選手と思っていましたが、はたしてその通りになりました。彼女の磨いてきた巴投げから関節技に、という技の流れは完璧で、準々決勝でフランスの選手と対戦した時に、実況のアナウンサーが、思わず"強い!"と叫んだのももっともです。このフランスの選手は、銅メダリストとなるほどの強さだったのですが、角田さんは、まったく技を出させず、赤子の手をひねるが如く、1分以内で勝負をきめました。ここに至るまでには、いかほどの精進・努力があったことかと思います。

強さも強さでしたが、試合場での態度もまったく立派で、優勝が決まった時の喜び方も実に抑制的で、人間的な成長を感じさせるものでした。しかし、それでいながら、その角田さんが、表彰式でハラハラと涙を流しているのを見たときは、こちらの目頭も熱くなりました。

角田さんには、世界選手権3連覇を祝して、本学の栄誉賞を授与しました。今回の金メダル獲得は、本学にとって、さらに誇らしい出来事です。学生や多くの方々の前で、これまでの経験を、お話いただくような機会をつくりたいと思います。

角田さんを本学で育て、今は早稲田大学にいらっしゃる射手矢岬先生が、カメラが観客席を向けた時、映っておられました。ああ、やはり現地に行っておられたと思いながら、角田さん、やりましたねとラインしたところ、感無量ですというお返事を頂きました。

【過去の学長室だより】
角田夏実さんのパリ・オリンピック柔道出場壮行会(4月13日)  (2024年5月15日掲載)
本学卒業生の角田夏実さんが世界柔道選手権(48kg級) 3連覇! (2023年5月23日掲載)
本学卒業生の角田夏実さんが柔道世界選手権(48kg級) 2連覇! (2022年10月21日掲載)
オリパラと本学。                      (2019年9月27日掲載)

「水を飲むな!」

梅雨も明けていないというのに、何という暑さか!というようなお天気が続いています。ぬるめのお風呂といってもいい、40度(!)などという気温が記録されたなどと聞くと、異常気象の重大さがひしひしと身近に感じられます。

私が学生時代に柔道をやっていたということは、これまで何度か、この学長室だよりの中でも触れてきました。そのことと関わって、暑い季節になると、あれは何だったんだろうか...?と、ちょっと気になることがあります。それは、当時(もはや半世紀くらいも前となりますが)の柔道部で、「練習中には水を飲むな!」と、きつく言われていたことです。これは、柔道だけではなく、他のスポーツでもそうでした。いわく、余計に疲れるとか、スタミナがなくなるとか。我慢が苦手な私は、身体的欲求に逆らえるわけなどなく(逆らうつもりもなく)、これで我慢してたら、死んでしまう!とばかりに、練習の途中で休憩となると、トイレなどでこっそりと水を飲んでいました。ただ、たくさん飲むと、練習中に、特に寝技の時などに、お腹がタプタプいってバレるので――当時は水を飲んでいるのがバレると、それなりに叱責されました――、そこは塩梅していました(こういうことの飲み込みは早いのです)。素直な連中は、私などと違って、隠れて水を飲むようなことはしていないようでした(大体そういう連中は強くなっていきました...)。野外のスポーツでもそうでしたので、今にして思うと、よく死者が出なかったものだと思います(もしかすると、いたのかもしれませんが)。当時の暑さは今ほどではなく、真夏でも30度を超える日はそう多くありませんでしたので、大きな事故がなかったのは、そのせいかもしれません。今は随分と様変わりして、練習の最中でも、水分補給には十分注意するようにと言われるようですが、そうした話を聞くと、当時のあれは何だったのか??どういう理論的根拠があったのか、また、それはどのように正されたのか?と、思うわけです。

結局、この「練習中には水を飲むな!」というのは、そう言わなくなった理由がはっきりしないのですが――大体、そう言っていたこと自体がおかしかったのかもしれませんが――、喉が渇いたら水を飲むというのが自然なことだとすれば、あれは、つらいことを我慢してこそ強く(うまく)なる――裏返して、つらいことを我慢しなければ、強く(うまく)なれないという、スポ根精神の延長上にあった言説ということだったのでしょうか?

同じように、当時は盛んだったものの、今ではまったく行われなくなったものに、うさぎ跳びがあります。うさぎ跳びは、子どもの頃に持続的に行うと腓骨の疲労骨折が起こるなど、成長期に望ましくない運動であるということが分かってきて、現在では行われなくなりましたが、私らの時代には、うさぎ跳びで、神社の石段まで上がらされました。あのスポ根精神の広告塔といってもよい「巨人の星」でも、星一徹と飛雄馬が、親子でうさぎ跳びをして(それを木の陰から明子ねえちゃんが心配そうに見て)いるというシーンがアニメの主題歌中にはさまれていました(YouTubeで確認できます)。うさぎ跳びは、「水飲むな!」の場合とは違って、かなり脚の筋を使っているという筋トレ感が強くありましたが、あれほど盛んであったのには、やはり、つらいことを我慢しなければ強くなれないという、スポ根精神が一役買っていたように思いますが、どうでしょうか...。

うさぎ跳びのようなものとは逆に、あの当時にはまったく行われていなかったのに、今では当たり前となっていると感じるものもあります。私がかねてより抱いているそうした感想など、機会を見て、また、記したいと思います。