「なすことによって学ぶ」をなすことによって学ぶ

第4回

A類学校教育
「なすことによって学ぶ」をなすことによって学ぶ

ちょこっとのぞきみ

 教育の世界には、20世紀初頭に提唱された「なすことによって学ぶ(learning by doing)」という原理があります。この原理は万能ではありませんが、21世紀日本の学校教育で推奨されている「アクティヴ・ラーニング」もこの原理の延長上にあります。
 また、提唱者たちの真意や、この原理にもとづく過去や現在の実践について多くの研究が蓄積されており、当学校教育選修にかかわる教員の中にも、これを研究テーマとする研究者が複数います。

 こうした選修内外の事情をふまえて、学校教育選修では、学生の教育にも「なすことによって学ぶ」を採用し、「なすことによって学ぶ」のデメリットを最小化してその効果を最大限発揮できる教師の育成を図っています。

※当ページでは被写体の肖像権に配慮し、写真を加工しています。

新入生歓迎行事「遠足」

 その手始めが新入生歓迎行事として実施される「遠足」です。実際に小中学校の遠足(校外学習)で使用される施設を会場とし、集団遊びや野外調理をはじめ、年によっては現地までの集団での移動、移動ルート上の史跡めぐりまでも新入生自身が企画・運営することで、学生相互の親睦だけでなく、正課の授業で学ぶ機会の少ない校外学習について学びます。

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1年次 模擬校外学習(1) 集団遊び「人間知恵の輪」

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1年次 模擬校外学習(2) 野外調理

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1年次 模擬校外学習(3) 江戸東京たてもの園の見学

子どもとふれ合う機会の確保

大学全体のカリキュラムの許す限り、授業の内容として、実際に子どもと接する機会を積極的にもうけてきました。

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2年次 子どもとふれ合う授業(1) 子ども縁日(巨大積み木コーナー)の運営補助

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2年次 子どもとふれ合う授業(2) ヤゴ救出作戦(プール開き前の水生昆虫採集)の運営補助

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2年次 子どもとふれ合う授業(3) 学内で実施されているプレイパークの参観

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 プレイパーク発足の初期段階では運営者と連携してたき火を実施し、子どもが裸火に接する活動のパイロットケースを提供しました。

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 このほか、課外活動として、学生有志が「なすことによって学ぶ」を全面的に取り入れた小学校の参観を希望した際には、教員が学校との交渉や引率を行いました。

「アクティヴ・ラーニング」の体験

 体験的活動を多用する「アクティヴ・ラーニング」について、学習指導要領の改訂前から、実際に学生が体験することでその可能性と限界、実施上の留意点について学んできました。

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アクティヴ・ラーニング体験(1) 辞書を使った学習ゲーム「たほいや」(2年次)

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アクティヴ・ラーニング体験(2) 体験型算数「円の面積」(2年次)

こうした授業の中から、後に注目され、普及する授業の先駆的な実践がいくつか生まれました。 

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アクティヴ・ラーニング体験(3) 「キャンパス安全安心マップ」を附属学校に贈呈(3年次)
 生活科で実施されることの多い「まちたんけん」の模擬体験をかねて「安全・安心マップ」づくりを行い、完成した地図を附属学校に贈呈しました。マップの作成方法には学生オリジナルのアイデアが採用されています。

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アクティヴ・ラーニング体験(4) 「安全安心マップ」のデジタルマップ化(3年次)

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ICTも活用したアクティヴ・ラーニング(1) 長期欠席児童や院内学級との交流を念頭に、リモート参加者を交えた授業の運営についても試行してきました(2年次。Covid19以前の実践なので、感染症対策はしていない)。

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ICTも活用したアクティヴ・ラーニング(2) 野外観察の模擬授業に、通信機器を活用してリモートで参加することも試行しました(2年次)。

教育実習前の「全員模擬授業」

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教育実習の事前指導(3年次)(1) 全員が教師役として模擬授業を実施します。
 実習生の授業といえども実習校の児童にとっては貴重な学習の機会なので、少しでも多くの経験を積み、事前指導でできるだけ多くの失敗をしておくことで、実習授業の充実を図ります。

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教育実習の事前指導(3年次)(2) リモートで模擬授業
 感染症対策で大学構内への立入が制限された期間中も、実習校での対面授業を想定して、リモートで模擬授業を試みました。

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教育実習の事後指導(3年次秋学期) 卒業生の現職教員による講話と質疑
 実習終了後ならではの疑問に、卒業生の現職教員が答えてくれます。制限時間まで質問を求める手が挙がり続け、ゲストも丁寧に回答してくださいます。遠方に勤務されている卒業生が、リモートで話をしてくれた年もありました。

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学生の発表で進める授業(3年次)
 どの大学、どの学部でも共通ですが、学年が上がるほど、特定の思想・理論や個別の実践について深く掘り下げて学び、学生自身が情報を発信する機会が増えます。

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卒業研究発表会(4年次)
 卒業論文(卒論)は、各自が問いを立て、適切な方法で答えを出し、後輩のために残すものとして位置づけています。卒論発表会を下級生に公開するほか、卒論はデータベース化され、後輩の卒業研究の資料として活用されます。

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卒業証書授与式(4年次)
 卒業は、「本当の勉強」の始まりです。目の前の現実から学び、児童や生徒ともにみずからも成長をやめない教師の育成を目指しています。

 ある卒業生は、学校教育選修での学修をこんなふうに回顧しています。

 「学校教育選修で学ぶことは『人がどこでどう学びどう生きるか』です。教育学を学んだ経験は社会にでてからも、様々な場面で考える素地となりいかされます」。

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