過去をみつめ、現在・未来の教育を考える

第4回

A類学校教育
過去をみつめ、現在・未来の教育を考える

ちょこっとのぞきみ

 これまで学校で世界史や日本史を学んできた皆さん、歴史を学ぶことは好きでしたか、嫌いでしたか。残念ながら、歴史というものに苦手意識をもっている人も多いのではないかと思います。実を言うと、私自身も大学で教育史を学ぶようになるまで、歴史を面白いと感じたことはありませんでした。当時の私には、過去はやはり自分の生きる世界とは別次元に感じられ、つながりが見えてこなかったからだと思います。
 しかし、世界史や日本史がこれまで苦手であったとしても、過去と現在をつなぐ視点をもつことは本来誰にでもできることです。過去と現在をつないで考えていくためには、現在の教育に対して何らかの関心や問題意識をもっていることこそが重要です。大学入学前に教育学を学ぶ機会は滅多にありませんが、皆さんのうち誰一人として教育経験と無関係に成長してきた方はいないでしょう。教育史は歴史的な研究方法を特徴とする領域であり、教育の思想や理論、実践、行政、制度...など、教育に関わるものであれば、ほぼすべてを対象とすることができますが、自分がこれまでの経験の中で、疑問に感じてきたこと、興味を抱いたことを歴史的に問い直すことが、過去と現在をつなぐ一番の近道だと思います。
 身近に存在した教師や保護者、あるいは教材・教具などの具体物に着目してみてもよいでしょう。

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 ここに紹介しているのは、歴史の中で開発されてきた国内外の教材や教具です。こうした目に見える分かりやすいものを入り口としながら、それを支える教育理論、カリキュラムや教育方法などについて学びを広げていくことも可能です。過去には様々な教育経験が存在しているので、それらを知らずして、真の意味で「新しい」ものを生み出すことはできません。現在や未来の教育についてより深く考えるための一つのアプローチとして、過去をみつめてみましょう。

学生からのメッセージ

萩原 智子

 歴史と聞くと、年号や名称を覚えることが大変というイメージがあるかもしれません。しかし教育史では、それらをきっかけや参考としながら、自分の教育観を意識化して、学んだことと比べたり、自分の教育観を問い直したりして学びを深めていきます。私は卒業研究で、大正期に公立学校でもさかんに「新教育」と呼ばれる革新的な実践改革が行われていた背景を研究しました。行政の働きかけが学校現場に大きく影響していることや、学校現場からも行政に対して様々な要望があったことなどが明らかになり、学校教育と行政の関係性や、教育が多くの人の関わりと研究で成り立っていることを、歴史的な視点から深めることができました。
 現在は、脈々と続いてきた過去から創りあげられます。続いてきた間には、全く変わらないこと、大きく変化したこと、なくなってしまったこと、新しく浮かび上がったことなど様々あります。歴史という視点から物事を丁寧にみていくことで、現在の教育の意義や価値を、より多角的に問い直すことができます。教育に関して、物事の経緯から批判的に考察してみませんか。また教育問題の歴史的文脈を明らかにし、現在や将来の教育のあり方を考えてみませんか。

教員紹介

遠座 知恵

学校教育選修では、「教育学研究法D」「外国教育史特講」「外国教育史演習」を担当。海外と日本の教育の影響関係に着目し、比較教育史的な視点を取り入れた研究に取り組んでいます。

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