教育を社会とのつながりから<br />考える!

第4回

A類学校教育
教育を社会とのつながりから
考える!

ちょこっとのぞきみ

 「教育社会学」では、学校や教育制度に限らず、教育に関するあらゆる現象を研究対象として、社会とのつながりという特有の観点から分析・考察していきます。その特徴は、「自明性を疑う」ということに尽きます。つまり、教育に関する事象において、私たちが当然だとみなしている事柄にあえて疑いの目を向け、新しい知見を得ようとする姿勢を保ち続けるということです。そうした姿勢を貫くには、教育現象に対して絶えずアンテナを張って考えていること、そして方法として用いる社会学のモノの見方や調査方法に精通していることが必須となります。分析・考察のための理論、質問紙調査やインタビュー調査などのスキルなど、学ぶべきことは数多くあり、日々ゼミ(演習)などを通して学び合っています。
 以下にA類・学校教育で教育社会学を専門とする2教員の授業風景の一端を紹介させていただきます。

 2020年度は、コロナ禍の影響で対面ではなくリモートでの講義を余儀なくされました。以下は調査データを分析して、半期の講義期間内にレポートを作成する演習形式の教育調査法の講義風景です。今期は、自宅からのアクセスはもとより、必要に応じて希望者には大学演習室での受講も認めました。その際、3密を避けるように着席をお願いし(演習風景1)、教員は研究室から指示を出す(演習風景2)という方式を採用しました。

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演習風景1 ― 大学サーバーにある解析ソフトにアクセスしてデータを読み込み、集計・分析 ―

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演習風景2 ― Microsoft Teams とWebクラスを援用して授業運営 ―

 また、調査方法だけではなく、社会とのつながりの中で教育現象を深く理解していくための授業も行っています。下にあるのは、2018年度の学校教育特講という授業の写真です。子どもたちがお互いの多様性(家庭の文化的背景や経済的格差、障害や学力差など)を尊重できるような学校・学級を作り上げるために、学校・学級や教師、さらには社会がどのように変わっていけばよいのかについて、カナダの多文化教育についての文献などをもとに毎週グループディスカッションを行いました。

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―「多様性を尊重する学校」とは?―

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―しっかり議論し、最後は笑顔で―

学生からのメッセージ

栗本 有彩(令和2年度卒業生)

 「教育」と聞くと学校をイメージするかもしれませんが、教育は学校の周りにある様々な機関や、地域、家庭などと密接に関係しています。例えば、いじめや不登校、子どもの貧困、学力格差などの問題に対して、学校という狭い視野ではなく、社会の問題として捉えてみると、多くの課題が見えてきます。
 授業では、これらの問題に対して「こうすべき」と主張する前に、社会とのつながりから問題自体を見つめ直します。先生方のお話をただ受け止めるだけではなく、自分の意見を発表したり、仲間と議論を交わしたりする機会がたくさんあるので、より考えを深めることができ、授業の度に新たな気づきに出会います。ゼミでは、論文の書き方や調査方法などを学ぶことができ、それぞれが関心のあるテーマに基づいて研究を進めます。私は卒業論文では、小学校にいる障害のある児童への教師のアプローチについて研究しました。インタビュー調査から見えてきた結果から、学校をこえた社会の課題を考えることができ、自分の関心を突き詰められた経験は、とても貴重で自分の財産になりました。
 みなさんも、より広い視野をもって一緒に教育を見つめ直してみませんか?

教員紹介

腰越 滋

伊藤 秀樹

 教育に関わる現象で、普段「あたりまえ」「よいもの」とされがちな事象に着目し、その自明性を疑うことから始める、というのが教育社会学という学問です。下記講義などでみなさんにお会いできたらうれしいです。
 担当授業: 教職入門、教育組織論(1年次科目)、 教育調査法、子ども社会学(2年次科目)、 生徒指導・進路指導の理論と方法、生活科研究(3年次科目)、教職実践演習(4年次科目) など

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